きらきら、(エヌジン)

―星の見えぬこの街。―


「随分荒れ果ててしまったの、エヌ・ジン」
「征服するためならいかなる犠牲も、というやつでしょうコルテックス殿」

―空を覆う灰色の雲は日を重ねる度厚くなっていく。―

(空気が汚い、)
そう誰もが思うであろう、ここにいる奴も思っていた
(空気が重い)
橙をした髪の男、は只思った
(苦しくはないのか、)
少なくとも自分は苦しくともなんともない、と苦虫を噛む。


あの日、影のヒーローはやられてしまった。
悪党軍団は喜んだ、「我々の時代がきた」と。

(む、壊れておる…。)
工場に点検にきていた橙の男は、空気清浄機(まぁ馬鹿にデカいが)に異常があるのを見つけた。
(これのせいで重かったのか、)
この世界は既に植物でさえも生身では生きてはいけない、
完全汚染惑星になってしまった。

「だがそれはワシらのせいではないのだよ」

(「只攻撃した位置が悪かった、標準をずらしたのはフクロネズミだ」か。)
核開発。
人類が生み出した兵器でも特に残忍で、殺傷性があり、
なにより回復の見込みがないのだ。

爆発したとき、人類が焼け焦げて、
残ったのは。

(拙者達は何がしたかったんだ?)

「「ワシが世界を征服するのは、ワシがこの腐った世界をワシが導いてやるためだ」」
「「決して己の殺傷願望に溺れた訳ではない」」

(清算した、と綺麗事でも述べておこう。)

ゴトン、と清浄機の羽が伸びた音がした。

(導いて下さるのか、本当に、お主が)

体に付いたヘドロを、舐めつけるように付いていたヒルを無理矢理剥がした。
服は頑丈、ヒルが付いた場所も赤く煙をあげているだけ。

(だが気圧が持って30分だな)

橙の男はそこに立ち、工場の屋上に立った。

(世界は変わった。)

―星の見えぬこの街。
空を覆う灰色の雲は日を重ねる度厚くなっていく。
しかし、このように月の見える夜が無くなるのは何処となく名残惜しい―

(月の見えぬ夜が無くなるのは名残惜しい?)

男は持っていたスパナで足元にいたヒルを、ただ力をこめて潰した、

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素敵な元ネタ→直子様

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