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最弱魔族観察日記

30
「お前の顔に付いてんのは何なワケ?ガラス玉?」

しかしフェリスは、自分ほど素直で正直な者はいないと思う。
素直な気持ちで『嫌だ』と言っているのだ。
何故それがわからないのだろう。

「…まあ、いい。いや、ホントは良くないけど。今はもう何も言う気力ない…オレ、帰る」

フラフラと椅子や机や壁にぶつかりながらも、扉に向かって歩き出す。

しかし、案の定と言うべきか三歩と行かないうちに足がもつれ、黒いドット絵が描かれた床に倒れ込んだ。

「へぶッ!!」

しかも当然のことながら、フェリスは受け身を取るようなスキルを持ち合わせていないため、顔に似合わない間抜けな声を上げ、見事に顔面をぶつけてしまった。

「おやおや…大丈夫かい?無理しないでもう少し休んでいったらどうだい」

「う、うるさいッ。ちょっと躓いただけだ!!」

擦りむいたのか、真っ赤に染まった鼻を押さえながら強い口調で言って、すぐさま立ち上がろうとする。

だが、いくら足を踏ん張っても生まれたての子馬のようにガクガクと震えるだけで、一向に力が入らない。

「…帰らないのかい?」
「ち、ちょっと休憩してるだけだよ!!」

もはやフェリスは半泣きだった。

しかしもちろん魔王に助けを求めることなど出来る訳がない。

俯いて、悔しさのあまりギリギリと歯軋りをしていると、不意に足元の光が陰った。

頭をあげるとそこには魔王の顔。
しかも恐ろしいことに、全くの無表情である。

「―――ッ!!」

悲鳴を上げかけたが、驚きに声が詰まって反対に言葉が出ない。

その変態二号(命名フェリス)の腕が自分に向かって伸ばされ、フェリスはバタバタと手を振り回した。

(に、逃げないとッ!!)

だが、逃げられるならばとっくに逃げている。

フェリスが一人アワアワしているうちに、二号(省略)がフェリスの腕を掴んだ。

ゾワゾワした寒気のようなものが、そこから這い上がって来る。


そもそもこの狭い部屋(いや、部屋としては十分広いのだが)に、魔王が二人という異常な事態に今までフェリスが耐えれたことが奇跡に近いのだ。


「は…離せ…ッ」

振りほどこうとするが、糸を引き千切ることも出来ないようなフェリスの力では無理な話である。

フェリスの思いを知ってか知らずか、二号は一向に離す気配を見せない。

おそらく掴まれたところは赤くなっているだろう。



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あきゅろす。
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