最弱魔族観察日記
26
(またアレ、着るのか…)
フェリスはかなり憂鬱な気分になったが、他に選択肢がないのだから仕方ない。
とにかく大事なのは、一刻も早く服を着ることだ。
いつまでもこんな格好(まあ、つまり素っ裸)を晒していて、目の前のケダモノが再び欲情でもしてしまったら大変だからだ。
その時フェリスがそれを見ていることに気付いたらしい黒フードが、影のようにスッと動いたかと思うと、その服に手を伸ばした。
「お、おい!?」
戸惑いの声をあげるフェリスだが、しかし黒フードはまったく動きを止めることなく少し皺が寄って、しかも所々に謎の染みがついてしまっているミニスカートをわし掴みにする。
「おやおや…」
意味ありげに微笑む魔王に、フェリスが「何だよ!?」とケンカ越しで言葉を返した。
その様は何となく毛を逆立てる猫を彷彿とさせた。
「いや、さすがだと思ったんだよ…まさかコレが誰に命じられたわけでなく自分から動くとはねえ…」
「だから、何なんだよッ!?」
余計なことは嫌になるくらい言うくせに肝心なことは何も言わない魔王に、フェリスの苛立ちはますます高まっていく。
「…コレが単なる魔族ではないことは、さすがのお前でも気付いていると思うがね…」
ひとしきりフェリスをいじって満足したのか、ようやく説明をし始める魔王。
フェリスはその説明に何となく引っ掛かるものを感じたが、こんなことで一々ツッコミを入れていたら話が進まないのをわかっていたので、取りあえず聞き流す。
「…コレはね、私が影にかりそめの生命を与えたモノなのだよ」
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