最弱魔族観察日記
7 出来ればついて行ってやりたかったのだが、将軍として顔も名も広く知られたレキが一緒では、色々と厄介なことに巻き込まれる可能性が高い。 事実、かつて将軍に恨みを持つ者たちがフェリスを人質にする事件があったのだ。 そのため多くの人の目に触れる所ではフェリスに関わってはならない、というのが将軍たちの決まりの1つとなっている。 しかしフェリスは将軍と一緒でなくとも、1人で勝手に厄介事に巻き込まれまくっていたりするので、この決まりはあまり意味がなかったりするが。 そんなフェリスのことなので(しかも今は女装中)もちろん心配だが (まあ、買い物に行くだけだし…さすがのフェリスでも大丈夫だろ) そうレキが考えた瞬間、すでにかなり遠ざかっていたフェリスが地面に頭から突っ込んだのが見えた。 慣れないブーツのせいか、ずっとフラフラヨロヨロしていたのだが、とうとう転んだらしい。 「だ、大丈夫…だよな…」 言葉の内容とは裏腹に、レキの顔は不安でいっぱいだった―― 店に着いたフェリスはカゴを掴むと、急いで缶詰のセールをしているコーナーまで走る。 ここに来る途中同様、フェリスの容姿に惑わされた何人もの男に声をかけられたが、もちろんシカトである。 そこにはすでに人だかり―それも女性ばかり―が出来ていた。 普通の男ならこの状況に怯むのだろうが、物欲に取り付かれたフェリスの目には缶詰しか写っていない。 全く躊躇することなく突撃し、とてもあの運動神経ゼロのフェリスとは思えない動きで缶詰を手中におさめていく。 見た目はとんでもない美少女でも、行動は完全にオバチャンである。 そうこうしている間にカゴがいっぱいになる。 ちょうどその時、店内に缶詰セール終了のアナウンスが流れた。 それでも往生際悪くワゴンにしがみつく女性たちを、目が一つしかない筋肉隆々とした男たちが無理矢理引き剥がし、ワゴンを運んで行く(何人かはそれでもワゴンから離れようとせず、一緒に運ばれていった) 幸いカゴいっぱいに商品をGETしていたので恥を晒さずにすんだフェリスは、置いてあったカゴを持ち上げようとする。 しかし 「ゔっ…」 当然ながら、上がらない。 [*前へ][次へ#] [戻る] |