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最弱魔族観察日記

5
しかし、レキにはレキの言い分があった。

「今のままだと、スカートの下から見えちまうだろ?」

それが…とフェリスの下着を指差す。

「あ…」

「男物の下着をつける女はいるかも知れないが、それがスカートから見えてる女はいないと思うぜ」

「そ、それはそうかも知れないけどな…」

「だろ?分かったらさっさと着替えろよ」

「う………」

反論出来ないフェリスは呻き声をあげた。

下着を見つめる目が、不安げに揺れている。

「そんなビクビクしなくても…たかが下着だぜ。初めて触るもんでないだろ。ただ男物か女物かってだけの違いだ」

(それが1番問題なんだよっ)

下着を人差し指と中指で摘み、顔をしかめる。

嫌と言うより、どう扱っていいのかが分からないらしい。

何しろ女物の下着など、触るどころか近くで見るのも初めてなのである。

それなりの年月を生きてきた男としては少々情けないが、考えてみれば当然のことである。

もし仮に、フェリスと恋人の女性(あくまで仮の話)が2人で並んで歩いていたとする。
周りは女性を見て、間違いなくこう思うだろう。

『彼氏よりブスだ』

どんなに愛があったとしても、そんな屈辱に堪えられる女はいない。

別にフェリスに非があるわけではないが、これでは女性が寄り付かないのも無理のない話である。

しかし、いつまでもこうして下着とにらめっこしている場合ではないこともまた事実である。

(缶詰の、いや生きるためだ。堪えろっ、俺!!)

自分に言い聞かせると、はいている下着に手をかける。

これはさすがにジロジロ見る訳にはいかないと感じたレキはさり気なく視線を逸らし、部屋の隅の辺りを見つめた。

(それにしても、つくづく狭い家だよな…)

気まずさからか、どうでもいいことを考える。

そのレキの耳に、獣の唸るような声が聞こえた。

反射的にチラリと声の発信源を見やり

「……………」

ポカンと口を開けた。


グレーのキャミソールに光沢のある黒のジャケット、膝までもない赤いチェックのミニスカートの下は、細い足を包む黒のニーソックスである。


「……なんだよ」

自分を見たまま呆然としているレキを、フェリスは恐ろしく不機嫌そうな表情で睨み付ける。

「いや…何ていうか…」

(やばいだろ、これ…)

フェリスは異常に整った、どちらからと言うと中性的な容姿の持ち主だが、いつも不機嫌そうで、しかも少しキツめの顔立ちのせいか、女性に間違われることはあまりない。




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