最弱魔族観察日記
おまけ
どうしても起き上がることが出来ず、魔王の城に行くことのできなかったレキは身体を走った悪寒に大きく身震いした。
「ヤバ…ますます悪化してきやがった…」
城で交わされている会話を知らないレキは、それを風邪のせいだと考え、さらに深く布団を被る。
その時、コンコンというノックと共に使用人の声が聞こえた。
「お休み中、申し訳ございません。…実は、その…フェリス様がおいでになられたのですが…」
「フェリスが?アイツ今頃は魔王様の所じゃ…」
風邪をうつしたためか、もしくは薬のおかげか次の日には全快したフェリスを城に連れて行くよう、自分は確かに他の将軍に頼んだ筈である。
「よう、レキ。元気そうだな」
レキが何か言う前に、フェリスが扉を開けて入って来る。
「…おかげさまでな…」
どう見ても元気には見えないレキが疲れたように言い、身体を起こす。
近寄って来るフェリスを見やり、目を見張る。
「ど、どうしたんだ!?その格好っ!!」
「うるせえ!細かいこと気にすんなっ!!」
「いや、細かくないだろ!?」
首の所が伸びたTシャツからは左肩が丸見えで、ジーンズはファスナーが壊れているせいで、上げることも下げることも出来ない有様である。
「唯一の取り柄の顔にまで傷が…」
「それ以上言ったら、頭カチ割るぞ」
動揺のあまり、誰もが思いながらも口に出さなかったことを口走るレキに、フェリスはギリギリッと拳を握る。
「で、でも、ホントどうしたんだ?大体…お前、魔王様の所に「俺の前でその名前出すんじゃねえっ!!」
ガツンッとベットを蹴りつけたあと、ソロソロと足を下ろす。
反射的に蹴ったはよいが、どうやら痛かったらしい。
「……それで、どうしたんだ?」
深くつっこまないことにしたらしい。
レキが声をかけると瞳にうっすら涙を浮かべたフェリスが慌てて、半ば無理矢理笑顔を浮かべる。
「ただの見舞いだよ。俺はお前のお・か・げで、風邪治ったけど今度はお前がかかっちまっただろ…これでも気にしてんだぜ?」
「…そ、そんな気にしなくても、俺様にも責任あるわけだし…」
涙で潤んだ瞳で切なげに自分を見つめるフェリスにますます動揺し、思わず手を伸ばす。
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