最弱魔族観察日記
1
魔王が棲む(と言われている)その城からかなり離れたほとんど人気のない場所に、その物置小屋は建っていた。
いや、分類上はかろうじて家に入るのかも知れない。
しかし、ボロボロで小さ過ぎなために物置にしか見えなかったりする。
そのあまりに狭い部屋(畳に換算すれば大体4畳くらい?)に唯一置かれた家具であるベットで、フェリスは小さくクシャミをした。
「…クシュンッ!…ちくしょ〜…この俺としたことが、まさかこんなヘマやっちまうなんて〜…ハ、ハクシュンッ!」
まさかも何も、いつもヘマしかしていないフェリスは鼻声でそう言い、またクシャミをする。
完全に「魔界風邪」である。
昨日の昼に起きた時(フェリスは朝にも弱いので、起きるのは大体昼頃である)には何ともなかったのだ。
そのあと昼食のために近くの川に行き、竿で魚を取っていた。
ちなみにその竿は「この前のお詫び(※貧乏な日参照)」と言ってレキがくれた物で、餌やテクニックがなくても魚が釣れるというものである。
事実、魚はかかった。
しかし竿をあげた者も使っている者も忘れていた。
魚を釣り上げるためには、多少なりとも力が必要であることを。
もちろん究極に非力なフェリスにそんな力があるはずもなく……
かくして魚に力負けしたフェリスは、釣り上げるどころか逆に川に引きずり込まれてしまったのである。
そしてこれも当たり前のことだが、フェリスは泳げなかった。
しかも頭から川に落ちたために、鼻や口からまともに水が入ってくる。
幸い、遠のく意識にフェリスが死を覚悟した(ついでにレキを呪い殺す決意もした)時に、自分に向けられた負のパワーを感じたのか真っ青な顔色をしたレキが現れ、フェリスを助け出したため命は取り留めた。
レキは咳き込むフェリスの身体から、魔術を使い余分な水気を取る。
そしてぐったりとしたフェリスを家へと運び、ベットに横たえた。
「フェリス大丈夫か?」
心配そうにフェリスに声をかけながら、かけ布団を探すが見当たらない。
「フェリス、何かかけ布団はみたいなのは…」
「…その辺」
「……ひょっとして、これか?」
確かにフェリスがヘロヘロと指差した辺りには布の塊があった。
しかし
「…これはかけ布団って言うより、座布団って言わねえか?」
「うるせぇな、いいじゃねえかよ。意外に暖かいんだ」
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