最弱魔族観察日記
1
にわかに空に暗雲が立ち込め、太陽を覆い隠した。
ただでさえ明るいとは言い難いこの地が、それにより更に薄暗さを増す。
それから幾ばくもたたないうちに、足元から靄が生じ始める。
靄はあっという間に白い霧へと変化し、数分で森の中は数メートル先も見えない程の濃霧で満たされてしまった。
「クソ〜!!何も見えねぇじゃねぇか!!」
そんな霧の中、煙るように蠢く人影。
小柄な人影は、何度も地面に倒れてはヨタヨタと立ち上がり、再び頼りない足取りで歩き出す――といった一連の動作を繰り返している。
ただでさえ、足元の不安定な森の中。
しかも、繁った葉のせいで日の光が地面まで届かないのか、今だに水気を含んだ土が靴の中に入り込んで、歩きにくいことこの上ない。
ガクガクと膝も震えていて、気を抜くとその場にへたり込んで動けなくなりそうだ。
「それもこれも…全部!!あのっ、馬鹿レキのせいだ…ッ!!アイツが家にいれば、俺がこんな所まで、逃げなくても…良かったのに…全く…役に、立たないヤツだな…ッ!!」
完全に息があがっているが、口を動かすのは決して止めない。
ある意味根性があると言えるが、していることが誰かを(というか、レキを)罵ることでは、とても褒められたものではない。
そもそもあの、貧弱さにかけては右に出る者がいないフェリスが、何故こんな深い森の中をたった一人、さ迷い歩いているのか。
事情は、今日の早朝に遡る。
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