最弱魔族観察日記
8※
「…ん…う、んん…?」
躯に違和感を感じて、フェリスは眼を醒ました。
(……何だ?)
霞みがかった頭で考える。
何故か躯がほとんど動かない。
苦労して僅かに首を動かし、自分が今いる場所を確認する。
電気は消えているが、窓から差し込む月明かりのおかげで、どこに何があるのか程度なら辛うじてわかる。
どう見ても、自分が食事をしていた部屋ではない。
「ど、こだ…ここ…」
僅かに掠れていたが、声は出た。
壁がぼんやりと白く光っているので、まだチサトの城であることは間違いない。
だが、何故食事をしていた自分がこんな所で寝ていたのか。
(わかんねえ…)
元々物事を深く考えるのは苦手なのだ。
さっさと無駄な努力をやめたフェリスは、まずは動けるようになるのが先決だと、取り敢えず指先を動かしてみる。
左手の小指から始まり、徐々に他の指へ。
「よし…だんだん動くようになってきたな…」
そうこうしているうちに、躯からダルさが少しずつ消えて行く。
これなら直ぐに起き上がれる――そう考えた時だった。
「…ッ!?」
背筋に電気が走った様な刺激が走り、躯が硬直した。
(な、何だ?今の……)
フェリスは何が起こったのかわからず、大層混乱した。
(…って、ちょっと待てよ…?)
よくよく考えれば、今の刺激には何となく覚えがある気もする。
しかし、それは今この状況では感じてはならないものだ。
(と、取り敢えず、何か知らねえけど、このまま寝てんのはヤバい…ような気がする…)
野性動物のように本能で危険を感じ取ったフェリスは、まず躯を起こすべく手に力を込める。
しかし
「ッひっッ…!!」
再び、ゾクゾク痺れるような刺激が躯を突き抜けた。
躯から、ガクン、と力が抜ける。
「な、何なんだよッ、これ!?」
訳がわからず、悲鳴のような声で問うてみても、答えなど返ってくる筈がない。
部屋の中には、フェリス以外『誰もいない』のだから――
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!