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最弱魔族観察日記

38
フェリスが、ヨロヨロと見る者が目を見張るほどに不安定な足取りで自分の家に向かって歩いていた頃――

自分の知らないところで悲惨な運命が約束されてしまった『あの将軍』は、洒落にならないくらいの寒気を感じ、震え上がっていた。

「か、風邪でもひいたかな…」

独り言を言いながら、布団を更に深く被る。

フェリスが出て行った後もしばらくフェリスの家にいたレキだったが、なかなか帰って来ない家主を待つうちに、ここに長居することの危険を思い出したのだ。

「あの人、見てないようで見てたりするからなあ…あらぬ疑いがかかる前に退散するか」

フェリスを女装させた時点で、既に『あらぬ疑い』ではない気がするが、レキの中では許容範囲のようだ。

その基準や根拠は謎だが。

それはともかくとして、取り敢えず自分の屋敷に戻って来たレキは、そこで何故か大変な悪寒に襲われ、ベッドの住民となった。

慌てふためく召し使いたちを下がらせて、大人しく横になっていたのだが、寒気はおさまるどころか益々酷くなってくる。

「マズイな…後でフェリスの様子見に行こうと思ってたのに、これじゃあ…もし風邪だったらうつしちまうかもしれないしなあ…」

前までならば『何とかは風邪をひかない』ですむのだが、何分フェリスには前科があるので油断出来ないのだ。

「でもなあ…アイツのことだから何かトラブルに巻き込まれてるかも知れないし…」

ゴロンと寝返りをうちながら、悩むレキ。

勿論彼は自分が今心配している者が理不尽な復讐を計画していることも、それが寒気の原因であることも知らない。



レキ・シリュウ――何とも哀れな男であった。




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