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最弱魔族観察日記

36
「あ」

少年が扉を開けると、そこには何やら見覚えのある後ろ姿。

「おや?あれは…入口で会った子だね。まだいたんだね」

少年に続いて姿を見せた男が、そう言いながら扉を閉める。

「うん…結構時間たってるのにね」

(つまり…それだけ相手がしつこかったってことなのかな…何か疲れてるみたいだし)

少年はそんなことを考えながら、自分の連れの牛男を横目でチラリと見る。

それに気付いた牛男が「なんだい?」と行って来たのを「ううん、何でもないよ」と誤魔化す。

二人が話題にしているのは、勿論フェリスである。

肉体的にも精神的にも疲弊しきったフェリスは、狭い階段の壁に身体を預けてヨロヨロと階段をくだっていた。

その不安定な足取りは、見ていてとにかく不安を煽られる。

「痛っ…っとに、アイツ、好き勝手しやがって…今度会ったら、生まれてきたことを後悔するような目に合わせてやる…」

痛む身体を引きずるようして段差を降りながらも、口から出るのは、まだあの悪趣味な部屋で優雅に寛いでいるであろう魔王に対する文句である。



結局、今まで見たこともない奇怪な文字で書かれた本に匙を投げたフェリスは、魔王に

「お前が造ったんだから、最後までちゃんと責任持てよ。それから、後でちゃんと俺の缶詰め、家まで届けろよな!!」

と『命令』をし

「届ける、ねえ…持っては帰らないのかい?」

尋ねて来た魔王に

「何言ってんだ、そんなモン持って帰ったら重いじゃねえか!!」

微妙に理不尽なことを言い捨てて、部屋を出てきたのである。

しかし考えなしに飛び出して来たために、フラフラの身体で帰る羽目になってしまったのだ。




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