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「女神の受難!?」

裏口で
(なんかもう、色々と最悪だ…)

セツナは破れてほとんど意味をなさなくなった黒いフードをグイッと引っ張り、少しでも顔を隠そうと努力しながら深い溜め息をついた。


どうしてこんなことになってしまったのか。


苦悩の表情を浮かべ自問自答するが、実のところ原因はハッキリしている。

セツナが、どうしてもルーたちを振り切ることが出来なかったのだ。

無論本気になれば可能であっただろうが、人間として不自然にならないスピードではあれが限界だった。

それでもかなりの速さのため、大抵の人間はついて来ることは出来ないだろう。

しかしどうやらリンが風の精霊術でも使ったのか、風に後押しされるようにしてピッタリと後について来るのだ。

精霊に命じてそれを止めさせることも出来たが、一応名目上は白の魔剣士であるセツナがそんなことをするわけにもいかず。

ルーたちと何とか距離をあけようと、小休憩すらほとんど取ることがなかったせいか、普通の傭兵たちが見れば目を剥くほどの短い間にこの街へと辿り着くことが出来た。

前の村とは違い、人の多いここならばあの三人を撒くことが出来るかも…というセツナの目論見はあっさりと潰えた。

どんなに逃げても、まるで発信器でもつけられているかのようにあっさりと見つかってしまうのだ。

セツナには自分がとても目立っている自覚がなかった。
もし少しでも自覚していたのならば、まずその黒づくめの格好をなんとかしていただろう。

そして、とうとう追い詰められたセツナがとある店の裏口のゴミ箱の影に身を潜めていると

「ん?何してんだ、あんた。ゴミ箱なんかに抱き付いて…変態か?」

「誰がだッ!!」

ふと気づくと、大きなゴミ袋を抱えた中年の男が裏口から胡散臭そうにこちらを見つめていた。

人に言うことはあっても言われたことなどない言葉に、思わず状況を忘れて立ち上がる。

「何だ、違うのか…じゃあ何でそんなトコに?あんた、傭兵か何かだろ?」

周りを高い塀で囲まれているせいか、裏口付近は昼間でも薄暗い。
そのためセツナの顔が良く見えないのだろう、雰囲気からすぐに傭兵だと判断した男がまだ少し怪しんでいる声音で尋ねてくる。

「それは…ちょっと事情があって…」

本当のことなど言える筈がないセツナは言い淀み、下を向いた。

それきり黙り込んでしまう。

その様子に、男は

「……まあ、人には色々あるわなあ」

取り敢えず危険はないと判断したらしい。あっさり言い放つと

「でもこんなトコでグズグズしてて良いのか?もうすぐ始まっちまうぞ」

「始まる…?」

「何だ?お前、領主様の依頼を受けに来たんじゃないのか?」

男は、首を傾げるセツナにすっとんきょうな声をあげた。

「俺も詳しくは知らねえが…何でも、賊退治のために腕の立つ傭兵を集めてるらしい。見た奴の話だと、かなりの数らしいから、てっきりお前も…いや、そんなわけないか。そんな細っこい身体してんだしな」

男の言葉は案にセツナが『弱そう』だと言っていたが、セツナはそれについて追及することはなかった。

その代わりに

「……その領主の城、近いのか?」



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