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「辛いなら俺の部屋に泊めてもいいけど」付け加えるようにして冗談めいた笑みを向ければ、響もつられるようにして笑ってくれた。
ずっと仏頂面だったから、笑ってくれて良かった。

響が考え事をしているらしく、暫くの無言が続く。
その間俺は未琴について行った爽太は大丈夫なのかなと考えを巡らせていた。
部屋に送ると言ってたけど、もしかしたら片付けを手伝う羽目になっているかもしれない。
そうなってたら凄く申し訳無いことをした気がする。
後でお礼か何かしなきゃな、そう思いながら下げていた視線を上げると響と目があった。



「……俺、ちゃんと未琴に言ってみます。逃げて、圭さんに世話になるわけにもいかないんで」



一皮剥けたような響に、俺は小さく頷く。
是非響のお世話をしたかったけど、折角響が未琴にガツンと言う気になったんだから邪魔しちゃいけないよね。
俺は「そっか、」とティーカップに口を付ける。
一口紅茶を飲んでからカップを置いて「何かあったら、何でも話聞くからね」と微笑みをを浮かべた。



「圭さんは、その、俺なんかに何でそんなに……」



足の間でギュッと手を拳にした響は、チラリと不安げに俺を見る。
声が段々と萎んでいってよく聞こえなかったけど、言いたいことは何となく伝わった。



「何でって、響が大事だからだよ」


「だ、大事って……!」



口をパクパクさせる可愛い姿に「響、顔真っ赤だよ」と微笑めば「だって、圭さんがそんな事言うから」と顔をそらされた。
あまりの可愛いさに手がでそうになるのを必死に我慢していると、タイミングが良いのか悪いのかポケットの携帯電話が震える。
どうやらメールが来たらしい。
響に断りを入れてから携帯電話を引っ張り出しメールボックスを開けば、篠原爽太の名前があった。
『今解放されました。未琴は爆睡してるので今のうちに響は戻った方がいいと思うんですけど、大丈夫ですか?』そこまで気を使わなくてもいいのに、と言いたくなる程丁寧な文面に俺は小さく笑う。
それから『大丈夫。今から行くから爽太も近くで待っててね』と短く返事を打って送信した。
「さて、」と立ち上がった俺は二人分のティーカップを流し台まで運ぶ。






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あきゅろす。
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