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嬉しそうに口元を弧のようにする未琴は、爽太の腕を引っ張ってずんずんと進んでいく。
もう俺と響の事は見えていないらしい。
そんな未琴に引っ張られながらも「後でまた連絡しますね」と振り返り爽やかな笑みを浮かべた爽太がヒラヒラと手を振る。
それに手を振り返しながら、俺が余計な事を言ったせいで爽太には迷惑をかけてしまったなと罪悪感で一杯だった。
何せ爽太は、未琴の事をあまり好いていないみたいだったから。
二人の背中を見送った後。
未琴がいなくなった食堂はいつもの落ち着きを取り戻していた。
とは言え、ヒソヒソと未琴の噂をする話し声は聴こえてくる。
何となく食堂に居づらくて「とりあえず、俺の部屋行こっか」と響に声をかければキョドられながらも了承を得ることに成功した。
別に部屋でどうこうするつもりは無い、けどね。
◇
部屋に入ってからも響は挙動不審だった。
ソファに座った今もなおキョロキョロと辺りを見渡し、落ち着きなくしている。
俺の部屋は白を基調としたシンプルな、観葉植物を置いてある程度の何のへんてつもない部屋だ。
何か気になった物があるわけでも無さそうで、やっぱり緊張しているんだなという考えに行き着いた。
そんなことを考えながら委員会室に置いてあるものと同じ、親衛隊の子から貰った紅茶を棚から引っ張り出す。
それを二人分のティーカップに注ぎ、「これくらいしか出せないけどよかったら飲んで」と響の前のテーブルに置いた。
それから俺は響とテーブルを挟んだあい向かいのソファに腰を下ろす。
「……あの、有り難うございました」
ティーカップに一口二口と口を付けてから、ポツリと呟くように響は言った。
緊張もだいぶ解れたようで、目はしっかりと俺に向いている。
一瞬紅茶に対してのお礼かと思うが、過去形なのに気付いた。
きっと響が言っているのは、俺が嘘をついて未琴と響を離した事についてだろう。
「それは、爽太にも言ってあげて」
「はい、それはその、後で言うつもりですけど……」
「圭さんにも言っておきたくて、」と顔を赤らめた響は戸惑うように視線を外す。
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