37 「やばい、片付けまだだった!」未琴はそう叫ぶ。 相変わらず声が大きい。 「響、早く帰ろうぜ!片付け手伝えよ!」 やっと爽太の笑顔が見れると安堵した瞬間。 未琴は爽太の隣にいた響の腕を掴んだ。 グイッと引っ張って無理矢理連れて行こうとする。 ……もしかして未琴と響って同室? そうなら余計な事言っちゃったかなとそれを傍観していた俺がふと視線を反らせば響の表情が歪んでいて、未琴の行動に嫌がっているんだとわかった。 それを見過ごすわけにもいかず、俺は未琴の手首を掴む。 急に手を掴んだ俺にびっくりしたのか一瞬力が弛んだ。 そのタイミングで響の腕を開放した。 「何すんだよ、圭」 「言い忘れてたけど、響を呼んでこいって教師に頼まれてたんだ。今日は一人で部屋に行ってもらえる?」 勿論、嘘だ。 嘘をつくのは悪いとわかっていても響の嫌がる顔を見たら、何がなんでも響を助けてあげたいと思うのは仕方がない事だと思う。 だって響、可愛いし。 大きなお世話かもしれないけど、守ってあげたくなるんだよね。 「そうなのか?俺も一緒に行く!」 俺の予想では、未琴はここで大人しく一人で部屋に戻ってくれたはずだった。 ところがその予想は大きく外れてしまった。どうしてこうなるんだ。 「一人で部屋に行ってくれる?」の部分はオールスルーをされ、俺は苦笑いを浮かべざるを得ない。 「大事な用事みたいだから、邪魔しちゃ駄目だよ」 「何だよそれ!俺転校したばっかで寮までの道とか全然わかんねーんだぞ?」 確かに、未琴の言うことも一理ある。 きっと一人で部屋に帰れないから心配だったんだろうに、のけ者扱いして申し訳ない気分になった。 まあ、だったらもうちょっと柔らかい言い方して欲しかったけどね。 寮までだったら俺が案内してもいいかな、そう思った俺は「じゃあ俺が、」と口を開いた。 けどその言葉は爽太によって遮られた。 「俺が案内する。未琴もそれでいいだろ?」 不本意そうに言った爽太は、チラリと俺に目を向ける。 「関わらないで下さいって言ったじゃないですか」とその目が語っている。 いやでも今のは未琴が可哀想だったから、仕方がないよね? 「ああ!ありがとな、爽太」 ←→ [戻る] |