[携帯モード] [URL送信]
35


「これ、頼まれてた書類。俺がいない間に委員室来てたんだよね?」



「忙しいのに手間かけさせてごめんね」と、とりあえず先ずは書類を渡さなければと手にしていた書類を突き出す。
昴は普段の表情に戻ると「ああ」と短く言いそれを受け取った。



「昴、ちょっとお願いがあるんだけど」



それから俺は本題に入るべく、小声で話しかける。
いくら喧嘩中だとしてもそれなりの音量で話せば耳に入るだろう。そうなればまた面倒になる。
俺の言葉に興味を持ったらしい昴は「お願い?」と復唱する。



「このままだと皆に迷惑かかるから、とりあえず唯だけでも連れて帰って貰えないかな。未琴は俺が何とかするから」


「まだ何も食ってねぇのに帰れって?」



首を傾げれば、昴の表情が歪んだ。
確かに昴はまだ何も食べていなかった。
けどそんなことを言ってるわけにもいかない。
チラリと騒ぎの中心に目を向ければ、未だ二人は「友達に悪口言うなんて最低だぞ、唯!」とか「キミなんて友達どころか顔見知り以下だけどねー」とか言い合いをしている。
非常にマズイ。
これ以上騒ぎが拡大すれば、風紀委員が来る事にもなりかねない。
ただでさえ忙しい風折に、そんなに迷惑かけたくないし……。



「埋め合わせは後でするから、ね?」



俺がそう言えば、昴はわざとらしくため息をつく。
「わかった」渋々といった様子で言った昴は騒ぎの中心へと近付く。
それから思い出したように振り返った。



「未琴に手え出すなよ」



思ってもいなかった言葉に俺は「え」と固まってしまう。
付き合っているとは言わないまでも、昴が未琴を気に入っているのは確からしい。
今までそんなこと無かったのに珍しい。そこまで未琴を想っているのだろうか。
ポカンとする俺と対照的に満足そうな表情を見せた昴はそのまま唯の肩を掴んだ。



「行くぞ、唯」



そのまま唯の首根っこを掴むと、食堂の扉へズルズルと引きずっていく。



「やだ、オレまだ言いたい事あんのっ!」


「いいから行くぞ」


「ちょっ、会長ぉ!」






[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!