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何気なく聞いてみれば「え、あ、いや……その」と爽太はやけに動揺する。
何か不味いことでも聞いてしまったのだろうか。
右往左往に視線を巡らせる爽太に、俺は首を傾げた。
「ええと、よく食堂で食べてるので……」
「そんなに俺の事、見ててくれたんだ?」
妙に焦る爽太が可愛くて、ついつい意地悪な事を言ってしまいたくなる自分が抑えられなかった。
俺の言葉に「なっ!」と顔をボッと赤くさせる爽太。
その反応も可愛い。
「嬉しいな。もしかして俺の為に和食の練習したの?」
「な、何でそれを……!響に聞いたんですか!?」
意地悪の延長でなんとなく問い掛ければ、予想外な答えが返ってきた。
「え?」と驚いて目を見開けば、爽太も「え?」と訳がわからないといった表情を浮かべる。
ええと、どういう事?
何でそこで響の名前が出てくるんだろう。
「響と、立花先輩の好きな料理は和食だから一緒に練習しようって話してて……」
「それを聞いたんじゃないんですか?」と首を傾げる爽太に、俺は口元の笑みが抑えられなかった。
だって俺の為に爽太と響が和食の練習って、嬉しすぎるでしょ?
そんな俺の表情で何かを悟ったらしい。爽太はハッとした様子で「カマかけたんですか!?」と叫ぶ。
「ごめんごめん。ちょっと意地悪して言ってみたのに、まさか本当に練習したとは思ってなくて」
「っ、酷いですよ立花先輩!」
微笑む俺を睨み付け、ムスッと唇を突きだして真っ赤になる爽太。
必死になっている爽太が可愛くて、口元の笑みを抑えようにもできそうもない。
「そんなに怒らないでよ」と声をかけるものの「怒るに決まってます」と言われてしまった。
随分機嫌を損ねてしまったらしい。
「爽太」
「何ですか」
「和食、楽しみにしてるね」
「……練習の成果を見せますから」
困ったように笑いながら言えば、爽太は小さく頷いてくれた。
機嫌が治って良かった。
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