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26


「爽太じゃなくて、昴が悪いんだよ。報告書のコピーはちゃんと生徒会室にあるはずなのに」



それから俺のデスクの一番下の引き出しを引っ張る。
それから分厚い茶封筒を取り出した。
確かこれが昴が求める書類が入っている封筒だった気がする、と中身をきちんとチェックしてから視線を爽太に向ける。



「爽太」


「何ですか」


「お腹すかない?」



封筒を手にした俺は引き出しを閉じ、そのまま視線を爽太に向ける。
俺の唐突な問いに「お腹、ですか?」と一瞬首を傾げたがすぐに「確かにそろそろ夕食の時間だし、すきました」と時計を見つつ答える。



「じゃあ食堂にでも行こうよ」



ニコリと笑いかければ、急な誘いに爽太はキョトンとする。
だがすぐにハッとしたように「え、でも書類は……」と心配そうに首を傾げた。
書類は後で渡せばいいと思っていたが、そこでそう言えば食堂には昴がいると思い出す。
そもそも食堂に俺を呼んだのは昴だった。



「昴は食堂にいるから大丈夫だよ。久しぶりに爽太と二人でご飯食べたかったんだよね」



相変わらずキッチリしている爽太に詳しく説明せずに昴が食堂にいると言えば腑に落ちない様子だった。
が、続く俺の言葉に顔を赤らめると笑顔を浮かべる。



「俺も立花先輩と食べたかったです!」



本当に嬉しいらしく、俺には爽太の千切れんばかりに尻尾を振る様子が見えた気がした。
人懐っこいしほんと可愛いな、爽太は。

ちょくちょく食堂を利用することもある俺だが、最近は殆ど自炊だった。
爽太も俺以外とはあまり食堂に行かず、料理好きなようでもあったから自炊をしていたらしい。



「それじゃあ行こうか」



目をキラキラと輝かせる爽太の頭を撫でてから微笑みかければ「はい!」と良い返事が返ってきた。
委員会室を出て扉を閉めてから廊下を歩く。
こうして二人で食堂に行くのは本当に久しぶりだった。
隣で歩く爽太は無意識なのか口角が上がっていて、それを見て俺も何だか嬉しくなった。






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あきゅろす。
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