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こうして「良かった」と微笑みを浮かべた俺と挙動不審な村井田君は二人で寮へ向かった。

それから、寮から委員会室へ戻って来た時にはもう遅くなっていて、そろそろ食堂に行かなきゃなと思いながら部屋に入る。
と、そこにはデスクで書類を漁る爽太の姿があった。



「ただいま、爽太」


「あ、立花先輩。遅かったですね」



扉を開けた俺に気付かない程真剣な爽太に声をかければ、ハッとした様子で振り返ってきた。
俺を視界に入れるとニコリと笑ってくれる。癒される。



「うん。ちょっと色々仕事押し付けられちゃってね」



押し付けられた訳ではないものの、説明するのが面倒になった。
俺は仕事内容を突っ込まれる前に「それより、どうしたの?」と話題を変える。
実際どうして爽太が書類を漁っているのか気になったのもある、けど。

チラリと散乱する書類を覗き込めば、どれも新歓に関連したものだった。
正確には風紀委員に提出した、去年の新歓の最中に起きた暴行事件や破壊事件等の事後処理の報告書のコピーだ。
また何かあった時に必要になるかもしれないから保存してあるんだけど……。
こんなものをどうして漁っているんだろうと首を傾げる。



「実はさっき会長が来たんです」


「昴が?」


「はい、去年と一昨年の新歓で起きた事件の報告書が欲しいと」



「けど一昨年の書類が見付からなくて」と苦笑した爽太は散らばった書類をまとめ始める。
大方、今回の新歓で事件を未然に防ぐ為に報告書を一読したいか何かだろう。
こういう時の為に報告書のコピーを別に生徒会に提出しているのに、どうやら無くしたらしい。

俺は昴のだらしなさにため息をついた。
そのため息が自分に向けられたと勘違いしたらしい爽太は「あ、勝手にデスク漁ってすみませんでした……!」とシュンとしている。
そのふるふると震える姿が悪さをして怒られている犬みたいで、俺はクスリと笑って爽太の頭を撫でた。






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