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「とにかく、気にしなくていい。これは風紀委員の仕事だ」
「……はい」
コホンと咳払いをした風折が再びカードキーを村井田君に突き出せば、村井田君はそれを受け取った。
それから風紀委員室に用がすんだ村井田君と、風折に帰るように促された俺は二人で部屋を出る。
扉を出る直前に耳元で「村井田を寮まで頼む」と言われ何だかんだ風折は優しいなと思った。
「あ、そうだ。新歓終わって忙しくなくなったら風折の部屋に遊び行くね」
「……わかった」
それを利用する俺は優しさの欠片もないと思う。
扉が閉まる直前に振り返り思い出したように告げれば、風折は渋々といった様子で頷いた。
風折はプライベートを大事にする人で、今まで部屋に入った事が一度もない。
こういう交換条件を出さないとこれからも入れてくれそうもなかった。
そう考えると村井田君を寮に送る事くらい造作もない、よね。
「村井田君はこれからどうするの?」
「えっと、寮に戻ろうと思います」
「そう。じゃあ俺が送ってくね」
「それじゃあ行こうか」と村井田君の手を取り寮へ歩き始める。が、そう簡単には行かないもので直ぐ様手を振り払われてしまった。
どうしたものかと村井田君を見れば「せ、先輩は委員会がありますし僕の事なんて気にしないで下さい!」と言われてしまう。
随分謙虚な子だよね、村井田君て。
「気にしなくていいよ。俺も寮に用があるんだ」
「そう……なんですか?」
村井田君を寮まで送る約束をしたからには果たさなければならない。
俺が笑顔で嘘をつけばそれに微塵の疑いも持たずに首を傾げてきた。
「うん。だから一緒に行こうと思ったんだけど……迷惑だった?」
もう一押しだな、と思った俺はわざとらしく眉をハの字にして首を傾げる。
すると予想通り「そんな事ないです!」とブンブン首を横に振る村井田君。
やっぱり村井田君は押しに弱いらしい。
もうちょっと気が強くても良いと思うんだけどな。
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