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18


俺の記憶が正しければ強姦事件の現場は第一資料室、だった気がする。
現在も使われている資料室だけど滅多な事がない限り誰も立ち寄らず、それ故に強姦によく使用される。
窓が1つもないせいか薄暗く気味の悪い部屋を思い出し、爽太連れてくれば良かったかなと後悔しながら足を進めた。
途中見回り帰りの役員に声をかけられながらも、なんとか資料室に到着する。



「圭くーん!」


「あれ、唯?どうしたのこんなとこで」



扉を開けようとしたところで、後ろから声をかけられた。
振り向けばそこにはさっき見たばかりの唯の姿。
後ろから俺の腹に手を回すと密着してくる唯をそのままに声をかける。



「会長にパシられたの。去年と一昨年の新歓の資料持ってこいってさー。人使い荒いんだからもーお」


「そうなんだ、偉いね」


「でしょー?」



新歓はもうすぐなのに未だそんなことしてるのかと内心思いつつも唯の機嫌を損ねるのは面倒だ。ニコリと笑っておだてる。
唯の手をやんわりと外しよしよしと頭を撫でれば、ネコみたいに手に擦り寄ってきた。

いつまでもこうしているわけにもいかず、俺は唯の頬から手を外すと資料室に足を踏み入れる。
事件後に美化衛生委員が総出で掃除をしたせいか、資料室にしては埃っぽくなくて綺麗だ。



「圭くんは何で資料室に来たのー?」


「美化衛生のお仕事だよ。被害者がここで落とし物したらしくて」


「美化衛生も大変だねぇ」



壁に沿うように置かれた棚に敷き詰められている資料を漁る唯。
俺は床を角から角まで見渡すが、やはりそれらしい物は落ちていなかった。
それでも暫く探してみたものの、結局最後まで見つからなかった。
というか掃除中に出てこなかった時点でやはりカードキーは別にあると考えて良かったのだろう。

とんだ無駄足だったなあ、と思いながらため息をついて放置されていたパイプ椅子に座る。
唯がまだ資料を漁っているし先に帰るのも悪い気がした。






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