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「冗談だよ。爽太、大丈夫?」


「へ、変な冗談止めてくださいよ!」



ゆっくりと背中を擦れば、復活した爽太が顔を赤くさせながら俺を睨む。
少し罪悪感に駈られたが今更冗談ではなかったなんて言えるはずもなく、ただ「ごめんね」と笑うしかなかった。

爽太から離れた俺はソファから立ち上がると、扉の前で呆れた様子で俺達を見ていた風折に近付いた。
「何の用だっけ?」と問い掛ければまた溜め息をつかれる。

酷いなあ、もう。



「強姦事件の被害者が襲われた際にカードキーを落としたらしいんだが、掃除中に見なかったか」


「カードキー?そんな報告は受けてないよ。ほんとに落としたのは襲われた時?」


「本人曰く、確実らしい」



カードキーは自室の鍵は勿論、食堂でお金の代わりにも使われているから早く見付けないと悪用される可能性もある。
いわゆるクレジットカード的な役割もしてるからね。

清掃中にカードキーを見つけたなんて報告は受けていないが、もしかしたら見落としたのだろうか。
角から角まで掃除したのにそれはあり得ない、と思うけど。



「生徒の名前って何だっけ?中村君?」


「村井田だ」



ちょっと名前を間違えただけだと言うのに物凄い形相で睨まれた。
俺は苦笑を浮かべながら「そうそう、村井田君だよね」と知ったかぶりをして誤魔化してみる。
また睨まれた。



「じゃあ、一応もう一度探してみるよ」



「無いかもしれないけど」風折の冷たい視線から逃れるように目を風折から外した俺は、そう付け足した。



「わかった。風紀委員室まで報告頼む」



相当忙しいのか、風折はそれだけ言うとそそくさと出ていってしまった。仕方なしに俺も仕事にでかけることにする。

爽太に「俺も行きます」と言われたが、そろそろ他の委員会の役員が見回りから帰ってきてもおかしくない時間で委員会室を空けるわけにもいかず、気持ちだけ受け取っておく事にした。






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あきゅろす。
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