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深いため息をついてティーカップを手に取った爽太。
だからさっき、沈んでたんだなと思いつつ俺はふざけてそんなことを言いながら笑いかける。
すると爽太は何を勢いあまったのか、「ブフッ!」とアールグレイに蒸せた。
びっくりした。
「だからっ、近付いちゃ駄目ですったら!」
「ごめんごめん、大丈夫?」
ゴホゴホと咳き込み苦しそうな爽太の背中を擦る。
ちょっとからかいすぎちゃったかな、と思いながらそうしていれば、俺はあることに気付いた。
今なら然り気無くお尻にタッチできるのではないか、と。
思い立ったら行動あるのみ精神の俺は、「苦しくない?大丈夫?」と言いながら徐々に手を背中から下へスライドさせる。
いよいよお尻に手が到着、というところで邪魔が入った。
「立花、この間の強姦事件の事なんだが」
忙しいのかノックもせずに委員会室に入ってきた風折は、先日俺が提出したプリントを持っていた。
強姦事件が起きた場所は、だいたい汚れていたりちらかっていたりする。
本来なら雇っている清掃員にでも片付けさせればいいが、強姦事件や暴力事件など生徒が意図的に汚した場合、美化衛生委員が片付けることになる。
理事長曰く「なるべく社会に出ても困らないよう出来ることは自分達でする事」らしい。
強姦事件なんかはほんとに悲惨な状態だから片付けは精神的にも大変なんだけどね。
誰かがやらなきゃいけないし、仕方ない。
「ちょっと風折、ノックくらいしようよ。あとちょっとで爽太のお尻触れたのに」
「……美化衛生の仕事はどうした。お前はセクハラで風紀委員室に連れてかれたいのか」
眉間にシワを寄せた風折は不愉快そうに溜め息混じりに言う。相変わらず冷たい。
俺の発言にのせいで爽太はまた蒸せたらしく、「なっ、なな何を!」とどもりながら未だゴホゴホと咳をしていた。
ちなみに、美化衛生委員の普段の仕事は校内の見回りが主。今日の当番は俺達じゃないが、見回りの報告を受けなければならない為委員会室にいるのだ。
委員長って大変だよね。
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