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12


振り返ればそこには帰りを待ちに待っていた爽太がいた。
慌てた様子で駆け足で近付いてきた爽太は俺から響に視線を移すと目を見開いた。
「久しぶり」と爽やかな笑顔で声をかける爽太に対して響も「ああ」と小さく笑みを浮かべた。

人と関わるのを嫌う響だけど、人当たりのいい爽太とは仲が良い。
たまに庭園でサボっている響を見て声をかけてはコミュニケーションをはかっていた俺に対し、爽太とは1日で仲良くなっていた。ちょっと悔しい。



「何話してたんですか?」


「ん?響が美化衛生委員に入ったらいいなって話だよ」



「良いと思わない?」と爽太に笑いかければ、爽太は興奮した様子で「それ良い!良いですね!」と言った。
とりあえず立って話すのもどうかと思った俺は爽太を俺の隣に座らせる。

今は爽太と響に挟まれるようにベンチに座っていて、両手に花だなと思いつつさりげなく2人の手を握れば一気に顔を赤くされた。



「響は美化衛生委員に入る気はないの?大変な仕事だから勿論強制はしないし、出来ないけど」



手を繋いだ事に関して文句を言われる前にそう問い掛けた俺は、視線を響に向けた。
髪も顔も赤くて何だか可愛い状態になっている響は「え、えっと……その、てててて手が」と恥ずかしいのか口ごもっていた。
このままじゃ話もままならなそうだな、俺は苦笑を浮かべながら掴んだ二人の手を離す。


「その、美化衛生委員……出来んなら、やりたいですけど……」


「本当?嬉しいな」


「あ、でも立花先輩。美化衛生委員って入るのに制限あるんじゃないでしたっけ」



モジモジしながら呟く響は、本当に見た目と中身のギャップが激しくて可愛い。
つい顔を綻ばせて素直に喜べば、思い出したように爽太が声をあげた。

委員会の役員はほとんど自主性だけど、風紀委員は成績優秀で素行良好の生徒という制限がつく。
けど何故か美化衛生委員に入りたがる人が多いから、風紀と同じ制限を設けたんだよね。






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あきゅろす。
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