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それから昴に帰るように促され、俺は会議に出たことを後悔しながら会議室をあとにした。

元はと言えば昴が俺と話したいが為にわざわざ美化衛生委員には関係のない会議に呼び出したというのに、結局話の内容はイマイチわからなかった。
とんだ怒鳴られ損だ。
しかもクリーニングしたばっかりのワイシャツのボタンは吹っ飛ぶし……まあ第一ボタンなんか必要ないから別にいいけど。


授業に出たせいもあり精神的に疲れた俺はため息をついて委員会室への道を歩いた。
委員会室は庭園の向かいの壁に設置されている。
何故かと言うと、美化衛生委員は校内の美化活動を行うと共に庭園やら花壇やらの緑化活動も行っているからだ。
清掃と草花からの美化、をコンセプトに活動している委員会が美化衛生委員である。
活動は大変だけど、個人的には清掃も園芸も好きだから苦ではなかった。



「……あれ」



委員会室に到着した俺が扉のドアを開けようとしたが、ドアノブが動かなかった。
どうやらまだ爽太は来ていないらしい。
放課後から随分時間がたったのにどうしたんだろう、そう思いながら俺は爽太が帰るまでの時間を潰そうと庭園に足を踏み入れる。


最近設置したベンチにでも座っていようと奧に進めば、そこにはもう先客がいた。
赤い髪を無造作に流しながらベンチに横になる――確か爽太と同じ高2Aで1つ下の後輩、秋葉響だ。

グッスリと眠っているから起こすのも悪いな、そう思いながら元来た道を戻ろうとすれば下に落ちていた木の枝を踏んでしまった。
パキッという音と共に響が目を覚ました。



「……圭、さん……?」



ゆっくりと目を開けた響は、虚ろな目で俺を捉える。
あまり目付きが良くないものの、見馴れれば意外と可愛い。



「おはよう響。ごめんね、起こしちゃって」



寝起きだからか焦点のはっきりしない様子の響を、可愛いなと思いながら頭を撫でれば段々と意識がハッキリしてきたようだ。
髪と同じように頬を赤らめた響は「いや、その、だだだだ、大丈夫です」と明らかに大丈夫じゃない様子で慌ててベンチから体を起こした。






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