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09


ここで下手に言い返せば火に油を注ぐようなものだ。
『クリーニング出したばっかなのにどうしてくれるの』という言葉を無理矢理飲み込んで、俺は黙って昴の顔を見つめる。



「……」



しかし、また何か続けて怒鳴ってくると思った俺の予想に反して昴は無言のままだった。
胸ぐらを掴まれたまま見つめ合うのは、なんというか酷く気まずい。

そしてどれくらいそうしていたのかわからないが、不意に昴が俺から手を離した。
苦虫を噛み潰したような顔を俺からそらすと、チッと舌打ちをする。



「……もういい」



何がいいのかさっぱりわからない。
俺は何やら臍を曲げた様子の昴の横顔を、どうしたものかと見つめる。
いきなりキレられたと思えば今度は臍を曲げている。

相変わらず、感情の起伏が激しいよね。
生徒会一めんどくさいよ昴は。



「昴」


「……」


「言いたい事あるなら、はっきり言って貰わないと俺もわからない」



何が言いたいのかも、何で臍を曲げているのか理由もわからない。
俺が何かしたのかと考えを巡らせてみるものの、やはりわからなかった。どうしようもない。

そうなれば本人に聞くしかないわけで。
俺は少しキツイ口調で昴に言ってみた。



「……今日、食堂来いよな」



だが、昴は俺の言葉を聞いていたのかいなかったのか。(多分聞いてない)
俺に視線を合わせるとポツリと呟く。
俺はあまりにも脈絡のない言葉に「食堂?」と目をぱちくりさせながら聞き返した。



「篠原とかいう奴とたまに来てんだろ。今日は来い」

「それは、別にいいけど……」



臍を曲げたと思えば今度は笑っている。昴は趣旨のわからない話の内容を笑みを浮かべながら口にした。

生徒会専用のエリアからだいぶ離れて食事をしていると言うのに、よく爽太と食堂に行っているのを知っているなと思う。
不思議に思いながらも頷けば、「絶対に来い」と昴はニヤリと笑った。

ほんと、意味わからない。
どうせ説明してくれないだろうから深くは追及しないけど。






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あきゅろす。
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