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08


「いいから帰れ。お前らが帰らなきゃ圭も帰れねーんだよ」


投げやりに言い放つ昴だけど、俺も委員会室には爽太が待っているしできれば帰りたい。
俺の様子を横目で伺ってくる唯に気付きながらも昴の言葉を否定せずにいると「しょうがないなあ」と最終的には唯が折れた。
ぶつくさ文句を言いながら亮平を俺から引き剥がしてダルそうに会議室のドアへ向かう。



「唯、亮平。またね」


「うん、ばいばーい」



俺のせいで帰らせる事になって罪悪感を抱いた俺は、出口に向かう二人にヒラヒラと手を振った。
それが嬉しかったらしい唯は、笑顔で返事をしてくれた。打ってかわって亮平は返事を返してくれなかったが、口元を緩ませて手を振り返してくれた。

そんな二人の様子に満足して昴に向き直れば、あからさまに不機嫌な顔で俺を見つめていた。
あまりいい予感がしない。



「……で、昴は俺に何か用?関係ない会議にまで俺を呼び出しちゃって」



特に興味の無い新歓の会議は自分が思っていた以上に苦痛だったらしい。思わず刺の入った言い方になってしまった。
それでも表情を崩さない昴に安心しながらも、この重い空気を何とかしなければとすかさず「爽太が待ってるんだけどなー」と何気なしに言えば昴の顔が歪んだ。

どうやら俺はかける言葉を誤ったらしい。
どうしたものかと考えつつも言ってしまったものは仕方がない、俺はただ昴を見つめているしかなかった。


椅子に座る俺に対して、机を挟んで向かい側に立つ昴はやはりランキングで堂々一位になるほどのルックスの持ち主だった。
体つきもしっかりしていて、それだけ見れば俺の好みにドストライク。
性格は、ちょっとよくわからないんだけどね。



「お前がっ!お前が悪いんだろーが!」


「っ、」



昴はいきなり俺を怒鳴り付けたと思うと勢いよく胸ぐらを掴んできた。
突拍子のない予想外な行動にビックリして思わず息をのむ。

胸ぐらを掴まれ、ワイシャツからブチブチっという嫌な音がした。
……この間クリーニングに出したばっかりなのにな。






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あきゅろす。
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