[携帯モード] [URL送信]
06


唯の急なフリに、慌ててプリントから顔をあげる生徒会の副会長を務める松永忍(マツナガシノブ)君。
物凄く嫌そうな顔をして唯を見ている。

松永君は生徒会室と自室以外あんまりでかけない所謂引きこもりらしく、たまにある会議では人の視線が嫌なようで終始震えている。
現に、唯の言葉で松永君に沢山の視線がいったせいか顔色を青くしていた。



「な、何で僕がそんなこと……!」



真っ青になった松永君は唯を睨み付ける。
怒鳴り付けたいようだが声は全く出ていなかった。睨み付ける眼光にも覇気がない。
震える松永君が小動物みたいで可愛いと思う俺は悪趣味なのだろうか。



「え、嫌なの〜?」



そんな松永君の様子に少しも気付いていないらしい唯は、不思議そうに首を傾げた。
ほんとに人の気持ちに鈍感すぎるんだから。
泣きそうな顔で唇を噛み締める松永君があまりにも可哀想で、俺は唯の配慮の無さに小さくため息をついた。



「唯。忍と亮平はそういうタイプじゃねえ事くらいわかってんだろ」



挙動不審になる松永君を見かねてか、昴は呆れたように唯を見る――ちなみに亮平というのは佐伯亮平(サエキリョウヘイ)の事で、あまりコミュニケーション能力がなく口数も少ない生徒会の書記を務めている人の事だ。

「ああ、そうだったそうだった〜」唯は反省していない様子でそう言うとヘラヘラ笑った。
松永君はすっかり青ざめていて、唇の色まで変わっている。なんというかここまでくると不憫だね。



「じゃあ引き続きオレが説明しよっかな。まず当日のスケジュールは――――」



何だか本当に自分がここにいる意味がわからなくてプリントをボーッと見つめた。
右から左へと唯の言葉が流れていく。

こんなんだったら会議なんか放棄して爽太と委員会室に行けば良かった、そんなことを思いながら俺はプリントから目を離した。
早く終わらないかなと時計を眺めていれば、あっという間に時間は過ぎて昴の言葉で会議は終わりをつげた。






[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!