8 どんだけ飲みやがったんだよアイツら、カーペットのシミとかどうしろって言うんだよ。 苛々しながら缶を拾い集めていると、七瀬がもぞもぞと動く。 「……かた、ぎり?」 「起きたのか、七瀬。気持ち悪いなら水持ってくるけど、大丈夫か?」 吐かれて、ソファまで汚されたら堪忍袋の緒が切れるのは間違いない。俺は最後の缶を袋に詰めた。 七瀬はボーッと俺を見る――寝起きだからか、酒飲んだからかわからないがヤケに大人しいな。いつもこれくらい落ち着いてたら楽でいいんだけど。 「……ああ、じゃあ頼んでもいいか?少し気持ち悪くてな」 おいおいおいおい。頼むぞ、吐くのだけは頼むからやめてくれよ。こんなに大人しいのも、もしかして気持ち悪いからなのか。そうなのか。 俺は袋をその場に置いたままキッチンへと急ぐ。それからコップに水を入れると、ソファに座ったままの七瀬に突き出した。 「ほら、水」 「ありがとう」 それを受け取った七瀬は、一口飲んでから微笑む。 なんて大人しいんだ、こんな七瀬なら幼なじみでも大歓迎なのに。 [*前へ][次へ#] [戻る] |