1 質問は簡単なものだった。 名前から始まりクラス、担任の名前など。 そして、どうやらコイツは俺と同じクラスらしい。 それにしても九条満(クジョウミツル)なんて名前聞いたことねえ。 ……授業に出てないから当たり前か。 「担任の先生は八神晋司(ヤガミシンジ)先生……っと。それじゃあ、九条君を襲ってきた生徒に見覚えはあるかな?」 スラスラとペンを走らせる先輩は聞き覚えのある名前を呟く。 八神先生は昔から授業に出ない俺を心配して、ちょくちょく部屋に来る。 最近は桐生が転入したからか、あんまり来ないけど。 つうかさ、ここに俺がいる意味あんの? 座ってるだけなら意味ねえだろ。 瑠璃川先輩がいるんだし、十分だと思うんだけど。 「ない……です、けど……」 「けど?」 口ごもる九条に、瑠璃川先輩は手元の書類から顔を上げるとが小さく首を傾げた。 「その、あの……多分ですけど……桐生君の当て付け、かなって……」 ポツリポツリと喋る九条。 もっとハキハキ喋れねえのかよ苛々する。 襲われても泣かなかったくせに、妙にオドオドしてんなコイツ。 つうか、何?桐生? 桐生ってあの転入生の桐生夕貴か。 まあ一緒のクラスだし、友達でもおかしくはねえな。 「桐生君にはいつも生徒会の皆様がついてるから……手を出せなくて、でも……僕はただの平凡だから……」 自分の容姿を自覚しているらしい平凡生徒――いや、九条は顔を俯かせると辛そうにギュッとカーディガンの裾を握った。 ←→ |