沢井虎太郎 SIDE
授業が終わって特に何の用事もない俺は、屋上にいるだろうヒナに会いに行こうとしていた――最近風紀委員のあの二人組と仲良いみてーだし、朝からうぜー奴に絡まれて苛々するし、とにかくヒナに会ってまったりしたい。
そう思いながら教室を出たところだった。今一番会いたくない、見たくもない奴が二人、目の前に現れた。
そう、桐生と九条だ。
「お前が満の言ってた赤髪か!」
真っ黒なボサボサの髪に分厚いレンズの眼鏡をしたソイツは、俺を指差すとデカい声で言った――いや叫んだ。
「ごめんね、沢井君……その、会いたいってきかなくて」
わざとらしく縮こまりながらボソボソと喋る九条に苛つく。
……猫被ってんじゃねーよ。コイツ、絶対わざと桐生が俺に会いに来るように仕向けたな。
まあ、んなことしても協力なんかしてやんねーけど。俺はとにかく桐生とヒナを会わせないようにすればいいだけだ――本人も会いたくないみてーだし、それはなんとかなるだろ。
「お前、沢井って言うのか?下の名前教えろよ!あ、俺は桐生夕貴って言うんだ!」
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