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(認めたくはないが)白く綺麗な手が挙がると筋肉先生は嬉しそうに出席簿を開く。
馬鹿の名前を確認すると、唾が飛んできそうに笑った。
正直汚い。
「何でホイッスルなんかぶら下げてるんですか?まさかオシャレでホイッスルをぶら下げてるんですか?いやさすがにファッションセンスが無さそうなピチピチTシャツを着ている先生でも、ホイッスルをぶら下げてるのがオシャレなんて思いませんよね。何でホイッスルぶら下げてるんですか?」
馬鹿は言われてもいないのに席から立ち上がると 筋肉先生をジッと見つめて早口に言った。
否、筋肉先生を見ているのではなくてホイッスルを見ているのだろう。
真面目な表情の馬鹿は、どんだけ「ホイッスルをぶら下げている」を強調したいのだろうかわからないが、とりあえず大事なことは二回で十分だ。
どこか先生を貶しながらの馬鹿の質問に、筋肉先生は気にしていない様子で笑う。そして言った。
「ハッハッハ!オシャレだ!」
私にはこの教室の誰よりも、筋肉先生は勇気を持った人物だと思えた。貶されているのに怒らずに笑い、自らの偏ったオシャレ感覚を発表できるその根性。
――だからといって筋肉先生のオシャレ感覚がダサいという事実は変わらないが。
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