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第13話 うまくいかない理性と衝動
 クラスでは形兆と香澄が別れた、ということになっているらしい。
 二人を囃し立てた罪悪感でもあるのか、形兆に話しかけるクラスメイトたちはぎこちない。無視していると、様子を伺って言葉をかけられることもなくなる。
 表面上はかつての日々を取り戻し、流れ作業の今をこなしていた――そんなある日。


 昼休みのことだった。
 形兆は香澄のいる教室から逃げるように裏庭で食事をしていた。億泰が目の前で行儀の悪い食べ方をしているが、注意をする気にもなれない。形兆はぼんやりと味のしない弁当を租借していた

 ふと空を見上げると香澄がいた。
 屋上から地面を見下ろして香澄が佇んでいる。思わず、まだ口に入れたばかりの唐揚げをそのまま飲み込んでしまって喉につっかっかる。
 香澄はフェンスの手前に立って、制服のスカートと髪の毛を風にたなびかせている。

「おい兄貴、あれ……!」

 形兆の視線をたどった億泰が腰を浮かせながら上ずった声をあげた。
 どうせ飛び降りるわけがない。そんな度胸あるわけがない――そう思った形兆をあざ笑うかのように、香澄はブランコからジャンプするような気軽さでつま先を蹴り上げた。

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