笛吹少女ニーラ 『こんな時間に、何用だ』 ギアロムは、肘掛けをその指先でトントン、と叩いた。 『重要な情報を、手に入れました。ミン。』 『はっ』 ミンは、スクリーンを出して見せた。 『ほう!これは、』 ギアロムが興味深げに身を乗り出した。 『ヌクルバ渓谷、南の方角へ60オル進んだ箇所に、敵があちらの次元に出入りしているゲートあり。そして、この建物は、あちらの次元の奴らの支部《キョウカイ》です、ゲートを潰せば、奴らの活動のよい妨げになるかと。』 ミンは、早口で説明した。 レンは、奥の部屋を睨み据えている。 『以上です』 オスロイスが、顔をあげた。 ギアロムは、拍手をして立ち上がった。 『上出来です。先は罰を与えてすまなかった。何か褒美を用意する。ただしやったらすぐ、潰しにゆけ』 口調は明るいが、物凄く高圧的。 レンが、一歩前に出るのをオスロイスが手で制した。 『褒美は要りません。 ニーラをお返し願います。』 … 沈黙が流れた。 『くっ』 ギアロムが、可笑しそうに笑い出した。 『オスロイス。』 『…はっ』 『貴様とも、あろう奴が、あの少女に特別な想いを抱くか』 ギアロムは馬鹿にしたように笑い続ける。 『ぬ〜…』 レンは怒りで震えている。 オスロイスは目を閉じ、そして凛とした表情で目を開くと、 『はい。わたくしの、大切な少女です』 と、言った。 ギアロムは笑うのを止めたが、 急につまらなそうな表情になった。 冷気が立ち込める。 『よかろう、ニーラを、ヌクルバに攻めに入るときまでには帰してやろう』 『!』 レンと、ミンは顔を見合わせ、オスロイスは安堵したような表情になった。 ふふ、とギアロムは笑った。 『しかし、我を満足させて、さらに生きていられるかな?』 オスロイスの顔が、曇る。 奥の扉が、音もなく開いた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |