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未知なる世界


先ず視界に入ったのは、真っ黒な生き物が、サラサラと粉のように散るところだった。

次に、赤色のピンポン玉くらいの大きさのものが、地面に落ちる……と思ったら、何かに吸い寄せられるように、方向を変えた。
ボケッとしながらも、その行方を目で追った。その赤色の玉は、近くの屋根に向かっているようだ。


「……あ」


二階建ての一軒家の屋根に、一人の女子がいた。しかも、彼女には見覚えがある。

……今日、彼女から逃げたことはまだ記憶に新しい。

どうやら、あの赤色の玉は、彼女が持つ鏡に吸い寄せられているようだった。
まるで手品のような光景に、驚くよりも何よりも……彼女が手にしているものに頬が引きつった。
もちろん、鏡なんかではない。


「……な、何でライフル!?」


テレビの中でしか見たことのないような物騒な代物を見たからなのかは分からないが……俺はまだ寒気がしている。
目の前で真っ黒な生き物が消えた、というのに、何故か俺の神経はピリピリと張り詰めたままだ。
ソッと息を吐くと、彼女はその屋根から飛び下りた。


……。

……飛び下りた!?


驚き、声をあげるより早く、彼女は楽々俺の側に着地した。足が痺れる様子も見せずに、実に平然とそこに立っていた。

……というか、今気付いたけれど、まだ制服着てるし。

若干呆れたものの、フと何か違和感を覚えた。

……何だろ?

じーっと彼女を見つめ、違和感の正体に気付く。
さっき持っていたライフルが……いつの間にか2丁の拳銃に変わっていたのだ。

つか、は?
マジでこの子何?マジシャン?

正直、驚き過ぎて、何から驚いて良いのかが分からない。
人がそんな状態の中、平然としている彼女……何だか不公平な気がする。


「なぁ、さっきのって――」
「話なら後にしてくれたまえ。……まだ、終わっていないんでね」


‘終わっていない’その言葉に文句を言いかけた口を閉ざした。

彼女はこちらを見ることなく言い、何か別のものに集中しているような気がする。

……先程のようなヤツがまた襲ってくるのかと思うと、背筋が凍えた。
つい先程味わったばかりの恐怖はそう簡単に消えはしない。

ゴクリと唾を飲み込み、キョロキョロと辺りを見渡した。そして……見つけた、あの黒い靄を……。


「!」


左斜め前にいる、塀の側でモゾモゾっとうごめいた。
先程の生き物みたいなのかは分からない。というか、あの黒い靄と真っ黒な生き物の存在自体が分からないんだから、俺に何かを判断できるはずもない。

反射的に彼女を見るが、銃を構えているものの、あの黒い靄に注意を払っているようには見えなかった。

……余裕、ってことか?
無表情な横顔からは何も読めないけれど。

ギュッと足に力を入れれば、どうやら今度は立てそうだった。

ゆっくりと立ち上がれば、彼女はチラッと視線をよこした。




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