たんぺん集。
リコールですか好都合です。
リコールされた。
孤児の俺が、強力な後ろ楯があるとはいえ実力で掴んだ生徒会長職を。
「ま、キョーミねえんだけどなー。」
始まりはひとりの転入生。
あり得ねえくらい汚い髪と服装に、眼鏡。
街で見掛けたら普通にドン引くレベル。
ああ、身嗜みの事な。
いくら俺がすれ違った人全員に惚れられるくらいの容姿だからって、顔面差別はしない。
そんでまぁその不潔男になんでか生徒会役員が惚れた。風紀の上役も惚れた。先生も一般生徒も、とりあえずイケメンみんな惚れた。
俺が惚れなかったのはイケメンの桁が違っていたからだと思う。
そっから、生徒会も風紀も、学園自体が機能しなくなった。
いや正確には動いてたけどな。
俺が生徒会役員5人分の仕事と、風紀の重要案件だけはやってたから。
ぶっちゃけ何回か死ぬかと思った。
別に他役員に情も好意もない俺が、何故他人の分までしてやっていたかと言うと、単純に自分がどこまで出来るオトコか知りたかったからだ。
どこまであのクソヤロウの役に立てるのか。
一心不乱に仕事を片付けつつ周囲にも神経駆け巡らせてたら、いっこの噂が入ってきた。
どうやら墜ちた権力者共がコソコソ動き、俺をリコールして不潔男を会長職に就けたいらしい。
正直言って失笑モンだ。
あの不潔男に会長職務が出来ると思っているのか、他4人で手分けしてやろうとしているのか知らねぇが、
「会長」って職はそんな簡単なモンじゃねぇ。
例えリコールして不潔男が会長になっても、仕事が追い付かなくて後から泣きついて来るのは目に見えてる。
ま、その前に他イケメン達の仕事放棄の証拠と不潔男の犯罪経歴もみ消した証拠も掴んでるんだけどな。
使う気はねえが。
別にいい。自分で立ち上げた会社が、そろそろ軌道に乗ってきた頃だ。
会長って肩書きはもういらねえ。
んで2ヵ月後くらい。
臨時に開かれた全校集会で、偽造された俺の仕事放棄の証拠と共に俺はリコールされた。
孤児には相応しくないとか何とか。結局俺の能力に対する嫉妬かと呆れる。
取り巻きと不潔男の嫌な笑いと、全校生徒からの軽蔑と共に俺は壇上から下ろされ、目出度く一般生徒になりましたとさ。
(…こんなもんか。)
集会後、裏庭の端。
いつものスペースで寝っ転がりながら考える。
自分の限界も何度か死にそうになる事で分かったし、過酷な仕事量から能力はむしろ上がった。
噂にも権力にも踊らされない見る目がある生徒も確認出来たし、信用できる部下候補も出来た。
「さーて、どうすっかな。」
このまま一般生徒として快適な学園生活を送るのもいいし、ここを捨てて別の所で学ぶのもいい。…もうひとつ選択肢はあるが、まあいい。
「どうせ俺が卒業したら潰れる学園だったしな。今潰れても変わりはねえか。」
クソヤロウに与えられたオモチャ(学園)に過ぎない。
グダグダ考えていたら、ケータイが鳴った。
…クソヤロウじゃねえか。
「……はい。もしもし。」
『…っふ。くく、サキ。リコールされたらしいね。』
「……。うるせえよハゲ。」
『お義父様に向かって何て口のききかただ。』
「……うるせえよ!」
『おや?落ち込んでいるのか。くくっ。可愛いなあサキは。』
「んな事でこの俺が落ち込む訳ねえだろ。」
『そうだね。サキが落ち込んでるのは私が「父」と言ったからだろう?』
「………本当うるせえ。」
クソヤロウが電話の向こうで笑っているのが想像できて余計ムカつく。
「で、何の用だよ。俺を笑う為だけに電話してきた訳じゃねえだろ。」
『いや、用はこれだけだけれど。サキを弄るのは私の趣味だからね。』
「〜〜〜!」
マジでうぜえ…!
『ふはっ冗談だってサキ。可愛いなあお前は。』
「っだから用件はなんだよ!さっさと言え!」
『サキの声が聞きたくなっただけだよ。悪いかい?』
「…………っ」
限りなくクソ甘い声が機会越しに聞こえる。
くそ…っ。顔が熱い。ありえねえ。なんで俺が赤くなんなきゃいけねえんだよ。
こんなクソ甘くてクソ優しい声出すクソヤロウが悪いに決まってる。
携帯越し言われても触れる事すら出来ねえだろ…!
『それで用件だけど、サキとサキが目を掛けた生徒達の今後が…』
「っっ嘘かよ!」
『ははは!サキはもう本当に可愛いなあ。』
「マジうぜえマジありえねえマジもう許さねえ!」
『ごめんごめん。嘘な訳ないだろう?サキの声が聞きたかったのが本当だよ。用件はついで。』
マジでムカつく…!
どこが本当でどこが嘘か分かんねえ。
からかってんのか、…本気なのか。
「もういい!で、結局俺らの今後が何だよ!?」
『熱くなったら負けだよ、サキ。ほらクールダウンして。』
「〜〜っもういいつってんだろ!」
『仕方がないなあ。サキ達の今後の事だったね。』
呆れた様に言われる。
いや違うだろ?俺が呆れる所だろ!?
『別に大した事じゃないけどね。これからの道をあげようと思って。』
「道?」
『そう。ひとつは学園に残ること。どうせ後1年で卒業でしょう。まあ1年持つか分からないけどね。お前が残りたいのならどうにかしよう。卒業後、思い出があれば学園を残し続けてもいい。』
「…別に学園に愛着はねえよ。」
元々潰れかけていた学園を、クソヤロウが勝手に買い取っただけだ。
俺の為には生徒会職を経験しておいた方がいいとか何とか。
『ふたつめは、アメリカの大学に行くこと。サキの学力ならスキップも余裕だよ。その方がサキの為にはなるかもね。私が卒業した大学から、入学許可も出ている。』
「…卒業した大学って、コネチカット州だろ。」
しかも世界一難しいって言われてる所じゃねえか。
確かに学力は問題ねえと思うが、コネチカット州とNYは遠すぎる。
クソヤロウが溜め息を吐く気配が伝わった。
『…仕方がないなあ…全く。それじゃあみっつめね。NYに来て私の仕事を手伝う。』
「…………………いいのかよ。」
『何言ってるの。それ目的でわざとリコールさせたくせに。』
「うるせえよ!言い掛かり言ってんな!」
『それで?返事は?』
「………手伝ってやるよ。」
『…ふ、本当可愛い。 でも、大学は出なきゃだめだよ。NYにある大学でいいから。』
「分かってるっつーの。」
顔が緩むのを自覚する。
どんなに付いて行きてえっつっても行けなかった所に、クソヤロウが居る所に、やっと行ける。
立ち上げた会社は部下候補達に任せよう。
数人も居れば回せるだろ。
退学届け出して、荷物詰めて、引き継ぎして。ああ面倒臭えな、早く行きてえ。
んであっちに行ったら、ぜってえ俺に惚れさせてやる。
曖昧な態度なんか取れねえくらい、俺が居なきゃ駄目だって思わせる。
『…サキ。』
クソヤロウが囁く様に言う。
『サキとまた暮らせるの嬉しいよ。早く会いたい。』
「っ……!」
退学届けは送ればいいか。荷物もあっちで何でもそろう。引き継ぎも電話とパソコンで済ませばいい。
とにかく飛行機のチケットを取ろう。
俺も、早く会いてえ。
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クソヤロウの名前出なかった…!
一応名前はリクといいます…。
以下補足です。
サキは10才のとき親に捨てられてリクに拾われる。リクは一目惚れ。
当時リク24才。ロリコンですねえ。
サキの気持ちには気づいてる。超溺愛。
だけどサキが自分を振り向かせようと頑張ったり、自分の気持ちが分からなくて不安そうにしているのが可愛すぎて先に進むつもりはまだない。
13才の時欲情して手を出し掛けて、サキが高校に上がると同時にアメリカへ。
ハタチになったら美味しく頂くを呪文に耐えた馬鹿な大人。
けどその前にサキが来ちゃったから、結局ハタチになる前に美味しく頂かれるんでしょーね。
サキは健気に会長職務を完璧にこなしたり会社経営したりして、役に立てますよアピール。
そんなとこにも陰で悶えるリク。
まあ日本離れても意地悪されつつ溺愛されればいいよ!とゆう。
なんか想像していた出来とまったく違くなっちゃったんですが…………(><)
ここまで読んで下さってありがとうございました!
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