コンシェルジュの憂鬱。
22
そんなことを思っている内に20時を回った。
藤堂様、帰って来なかったな…避けられてる?…いやまさか。私にそこまでするとも思えない。
…考えていたって拉致明かないな。
仕事かもしれないし、デートかもしれない。もう考えるのはよそう。
そう自分に言い聞かせて、その日は帰宅した。
翌朝。昨日よりはマシだが、やはり歩くのは辛いな…。今日は早めに出よう。
と、朝食を作っている時に、チャイムが鳴った。
この家に友人を招いたことなんてない。来たことあるのは宅配便のお兄さんくらいだ。
だから今日もそうだと思って、印鑑を持って玄関へ向かった。
「はい。」
言いながら扉を開けると、目の前に青――藤堂様が居た。
「お早う、明人。身体は大丈夫?」
「はい、え、あ、はい。」
テンパって2回言ってしまった。
「そう。朝早くから申し訳ないね。少し上がらせてもらうよ。」
え、え、上がるって、私の部屋に!?
「あ、はい…。」
何も言えず、通してしまった。ワンルーム、あるのはベッドに机、勉強道具に冷蔵庫、各種料理器具だけ…散らかし様もない。
テレビも、パソコンも、漫画も本も何もない。
いつもならこんな部屋に誰かを入れようなんて思えないが、その時はかなり気が動転していた。
「――、」
藤堂様は一瞬立ち止まったが、すぐに何もなかった「あ、申し訳ありません、クッションとかないのですが、…」
椅子もないからそのまま座って頂くしかない。
「ああ、気にしないで。適当に座るから。」
藤堂様はそう微笑まれて、興味深そうに部屋を見渡す。
私はその間に急いで台所に行き茶を沸かした。
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