コンシェルジュの憂鬱。 23 「緑茶ですが、お嫌いですか?」 「いや、日本のお茶は全部好きだよ。ありがとう。」 藤堂様が一服した後、聞いた。 「あの、どうしてここに…?何かご用でしたでしょうか。」 「いや、ただ昨日一日動けないと思っていた子が、朝から元気に働いていたと聞いてね。」 それって私の事だろうか。 いやそう見せなかっただけで元気ではなかったが…。 「早めに仕事を終らせて、世話を焼こうと思っていたら、朝から出勤したと。私は若さを見くびっていたのかな。驚いたよ。」 あ、だから朝早くいなかったのだろうか。ていうより、世話を焼くって…私の? 「で、せめて君の勤務中に帰ろうとしたが、部下が馬鹿をしてね。さっきまで仕事だよ。」 えっ徹夜明けなんだろうか。その後私に会いにきてくださったのか。いやまさか。 「そうしたら明人の顔が見たくなってね。朝早くで申し訳ないが寄らせてもらったんだ。」 う、うあー!か、顔を!私の顔を見たくなったって!!いや落ち着け私、藤堂様はとてもおモテになる。浮かれるな、調子に乗ったら切られるぞ。 「ありがとうございます。藤堂様にその様に言って頂けると。朝食を作っていた所なのですが、もし宜しかったら食べて行かれますか?」 調子に乗りすぎか?いやでも朝来た人に、このくらい社交辞令でも言うだろう…? 「ああ、嬉しいな。明人の手作りだなんて。…だけど、食器の予備はあるのかい?」 「いえ、一組しか買っておりませんが…?」 「……もしかして、俺にだけ作るつもり?」 「え、い、いけなかったでしょうか。」 私がそう答えると藤堂様はため息を吐かれた。何がいけなかったのだろうか。普通がわからない。 「ほら、着替えなさい。明人の手料理は食べたいけれど、俺は明人と食べたいんだよ。朝食は食べに行こう。」 [*前へ][次へ#] [戻る] |