俺の欲しいもの。
9
「ん〜…別にぃ。いーんちょどしたの〜?」
『ああ…、今日来れるか?』
「二日連続なんて珍しいねえ。だいじょぶよ〜今から?」
『ああ。待ってる。』
きゅん!またきゅんってしたあ!待ってるって!!
「あいあーい!」
元気に返事をして、急いでカラコン付けて眼鏡して髪セットして部屋をでる。
会いたい。変な事思い出したからかな。変な事悩んでるからかな。
なんかいーんちょに頭撫でて欲しくて仕方がない。
「こんばんわ〜いーんちょ。」
「おう、入れ。」
急いだから10分で着いて、部屋に入る。
「あれ?今日はお仕事してないんだあ。珍しいね。」
いーんちょは苦笑した。
「さっき終わらせた。…日曜だしな。今日は少なめだ。」
大変だなあ。仕事はあったんだね。
「お疲れさまんさ〜。ごめんなんだけど、シャワー借りていい?浴びてないんだよねえ。」
「ああ、俺も浴びようかな。」
「え゛?」
「あ?文句が?」
「いや〜そんなことないけどお。」
だって、恥ずかしいし恥ずかしいし恥ずかしい…。
「じゃ、湯張るか。久々に浸かりてえ。」
「あ、じゃあ俺風呂掃除してくる〜。」
「…悪ぃな。頼む。」
これで一緒にシャワー浴びなくてすむ!
いや、別に本当嬉しいんだけど、恥ずかしさが勝っちゃうんだよね。明るいし。
お湯を溜めて戻ると、いーんちょはテレビを見ていた。
珍しい!なんか娯楽的なことしてるの、初めてみた!
「いーんちょもテレビなんて見るんだあ。」
隣に座って言うと、呆れた様に顔を向けられる。
俺、いーんちょの呆れた顔好き〜。しょうがないな、って言われてるみたいで。妄想だけど。
「当たり前だろ。しゃべ〇り007は毎週録画してるしな。」
「えっ本当?これ再放送じゃないんだ。俺も好きだよ〜有〇まじウケる。」
「俺も有〇と泰〇の絡み好き。」
「すき」だって!今の絶対脳内保存!
「あ〜面白いよねえ。俺は徳子さんも好きだけど。」
「…おまえ、結構みてるな。」
「毎週リアルタイムでね〜。徳子さんがわかるいーんちょもなかなか。」
ふたりでちょっと笑う。
で、その時ちょうど徳子さんが出てふたりで爆笑。
俺見るの2回目だけど、やっぱ何回見ても面白い〜。
てゆーかいーんちょの爆笑、超レア!初見!やばい嬉しい!
笑ってたらお風呂が沸いた音楽が鳴ったので、一回止めて風呂に入ることになった。
「なんで一緒に入るの〜!?」
「お前別にいいって言ったろ。」
「い、言ったけど〜…」
シャワーの話しかと思ったし!
「邪魔。さっさと入れ。」
いーんちょに押された。う〜〜さっさと洗ってさっさと浸かってさっさと上がろ!
…結局、さっさと洗おうと思ったらいーんちょに洗ってやるって言われて、魅力的すぎなその言葉にお願いしちゃって、ムラッときたらしいいーんちょにそこでいっかい襲われた。
んでお風呂一緒に浸かってたらまた抱かれて、ちょっと逆上せちゃった俺を抱えてベットまで行ってくれて、また抱かれた。
…何がさっさとだよ俺〜!いや嬉しいけどね!
次の日。採点が終わった教科のクラス毎に、授業中にテストが返却される。一週間かけて返されて、順位が出るのはまた来週。
仕様がないよね〜生徒数多いし。
その日返されたテストは、全部90点以上。しかも90点後半が多い。
ちなみに、平均的はどれも大体60点くらい。それだけこの学園のテスト、難しいんだよね。
俺は今まで、70点後半とか80点代とかが多かった。それで600人中23位。一度も90点代は取ったことがない。
…イケんじゃない?
ちょっとこれ、5位以内イケんじゃない?
どうしよう!初日に調子のって、あと4日ボロボロだったら!
…よし、忘れよう。とりあえず来週までこの成績のことは忘れよう。
部屋で一人で決めていると、携帯が鳴った。見るといーんちょ。
時間はまだ9時45分、しかも連絡があるのは3に連続。
「もっしもし!いーんちょどーしたの?」
『…今日はテンション高えな。』
「わかった?わかっちゃった!?別にテストのことなんて考えてないよ!自分でびっくりする位いい点数だったなんて考えてないよ!」
やっぱ無理だー!喜びたい!だって90点だよ!?信じらんない!
『はは、点数良かったのか。よかったな。』
「うん!」
あ!肯定しちゃった!
またいーんちょが笑うのが分かった。
「それでいーんちょ、どーしたの?こんな時間に電話なんて珍しいねえ。」
『ああ、しゃべ〇り今からだろ。俺も久々にリアルタイムで見ようと思って。一緒に見よーぜ。』
っえ!えええ!なにこれご褒美!?拒否ってたのに実はご褒美くれちゃうの!?
「見る見る〜!今から行くねえ!」
やばい嬉しい!でも人に会わないように行かなきゃ!
カラコン着けて、ダッシュでいーんちょの部屋に向かった。今度はさすがに会長には会わなかった。
「おじゃましまあす。」
「ああ、入れ。」
部屋に入るともう10時2分前。ふたりでテレビの前のソファに座る。
「この番組、面白いとこ最初に流しちゃうのいらないよねえ。」
「俺もいつも思うわ。録画んときは飛ばしてるけど。」
「楽しみが減っちゃうってゆうかねえ。」
下らないこと話しながら見て、笑う。たまに爆笑する。
「あー、やっぱゲストが芸人とき楽しいな。」
CMのときいーんちょが言う。
「うん〜。モデルとかだったら、全く喋んない時あるもんね。」
「…お前、本当に見てるな。」
「だから毎週見てるって。」
ニヤッて笑いながら言うと、いーんちょも笑った。
番組終わるまでこんな感じで、また一緒にシャワー浴びてヤッていーんちょは仕事をして、俺はソファに寝っ転がる。
ちょっと休んで帰るつもりだったんだけど、いーんちょの背中見てたら何か変な感じになってきちゃった。
「…ねえいーんちょ。変な質問していーい?」
「あー?」
一段落着いたのか、顔を上げてくれる。
「……もし、いーんちょが記憶無くしちゃったとするじゃん?」
唐突過ぎたからかな、ちょっと不思議そうに笑ってああ。と答えてくれる。
「自分の生みの親とかさ、家とか…自分が生まれた理由とか、自分が知らない理由とか…いーんちょだったら知りたいと思う?」
少し驚いた顔をする。だけど俺が笑ってても真剣なことに気付いたのか、真面目に考えてくれる。
「…そうだな。記憶喪失になった事なんてないから、確かな事は言えねえが…。俺は基本、前しか見ないように心掛けているつもりだ。だけど自分が生まれた時…自分の原点を知らなかったら、前に進めねえ気がする。だから俺なら知りたがるだろうな。」
俺、いーんちょに少しでも近づけてるかなあ?こんな意味不明な質問にも、ちゃんと答えてくれる。
「…原点…前に、」
「飽くまで俺の考えな。実際そうなったらどうするかなんて分かんねえし、人それぞれだろ。」
「…そーだよねえ。」
「なんだ?お前記憶喪失なのか?」
ちょっと笑って言われる。
「あははっまさかあ〜。生年月日からちっちゃい頃の事までばっちし覚えてるよう。」
そこで話しは終わって、いーんちょは仕事に戻ったけど俺はそのままの体勢だった。
原点…前に進めないかあ。俺も、前に行きたい。
あっ寝ちゃったよ!朝起きて気付いた。ちょっと休んで帰るつもりだったのに。
「起きたのか?お早う。」
「おはよう〜…ごめんいーんちょ、俺寝ちゃったみたい…今何時?」
「気にすんな。まだ5時前だ。」
あ、まだそんな時間。
「ありがとお。じゃ、俺帰るね〜。」
「あ?シャワー浴びてけば?」
「ん〜今の時間だったら誰にも会わないだろうし。」
「ああ…、また連絡する。」
「ん、りょーかい。昨日はありがとね。じゃねいーんちょ〜。」
帰ってシャワー浴びて、昨日しなかった分の資格の勉強をする。
「あ、やばもうこんな時間。
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