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俺の欲しいもの。




座って、前を向いた瞬間固まった。
左斜め前、「山川輝」が座っていたから。


…神様、そんなに俺が嫌いですか。そーですか。

目が離せなくて、起立の声に少し遅れて慌てて立った。

…あ、背え一緒くらい…。ってか体格も同じだし。

なにこれ兄弟の神秘?異母兄弟だけど。かっこわらい。


入寮式は普通に進んで、生徒会挨拶の時はさすがに歓声にびびったけど、すぐに気がついた。

「山川輝」、生徒会長好きだな…。

目で追ってる。熱が篭ってる。その後で、恥ずかし気に俯く。

…何、これ。さいみょうゆうはお前の事が好きなのに。
お前は絶対に届かなそうな会長が好きなのか。

じゃあくれよ!  叫びそうだった。悔しかった。さいみょうゆうの気持ちはいらないのか。俺が死ぬ程欲しい想いは、別にいらないのか。

だけど、俺の冷静な部分が、これも仕方のない事だ、って言っていた。


だって他人の気持ちなんてどうしようもない。俺がどうこう出来る事じゃない。




その後で、風紀委員会から緒注意があった。

「風紀委員長、斎明悠」

さいみょうゆう。斎明悠。風紀委員長なのか…。歓声は生徒会の時に負けず劣らず。


斎明悠を見ていると、切なくなった。だけど同時に愛しくて仕様がない気持ちにもなった。

そうだ、仕方がないんだ。人の気持ちなんて。だって俺は、望みがないなんて分かっても彼が好きで仕方ない。彼のために何かしたくて仕方ない。彼の役に立ちたくて仕方ない。彼に少しでも関わりたくて仕方ない。


そんで、俺は思い出した。中1の時、オッサンに家の事を聞かされ、悔しくて眠れなかった時。俺は何を思って立ち直った?

確かに斎明悠は「山川輝」が好きだけど、そんなの俺の努力次第で変わるかもしれない。変えられるかもしれない。


俺は、幸せになる。その幸せには、斎明悠が居てくれることが絶対条件だ。


どーにかして、斎明悠の気持ちをこっちに向けてやる。


俺は入寮式が終わって、適当に数人と仲良くなって斎明悠のことを聞いた。

1年の時から異例の風紀委員副委員長、試験は会長と毎回同率1位。中3までは入れ食い状態だったのに、3年生になると同時にパッタリ誰も抱かなくなった。


他の友達に聞くと、「山川輝」が城静学園に来たのは中2になると同時。


…そういう、ことなのかな?じゃあ俺は、「山川輝」と同じ身長、体格の俺は、髪を黒くして目を黒くして眼鏡をかけて「山川輝」の真似をしたら、相手にしてくれたりしないかな?彼の目に、俺を写してくれたりしないかな?




オニーチャンに連絡してみる。オニーチャンは俺と同じ施設のお兄ちゃん。
というか、俺を率先して虐めてた奴。
だけどすぐ人の家に養子に行って、大学も出てもう社会人。

俺が、目茶苦茶勉強し始めると可愛がってくれるようになった。努力する奴は好きなんだって。

男も女も食い散らかしてたオニーチャンなら分かるかも。

『すっごく好きな人に好きな人が居て、それまで遊んでたのに丸2年も誰ともヤッてなかったら、好きな人に似てる人を抱きたくなったりする?』


すぐ返信はきた。


『そりゃするだろうな。でも似てる奴が真面目だったりすると人に寄っては無理かも。』

『どういう意味?』

『真面目な奴に手え出して修羅場になって、好きな人に知られたら困るだろ。』

…そっかあ。

『明日そっち行くからチャラ男のなり方教えて!』

『はあ!?』って返ってきたけど、無視して次の日向かった。入学式前は比較的外出も自由だ。




オニーチャンにチャラ男とは、と教えてもらって、とりあえず語尾を延ばすことにした。

後はお尻の開発。してやろうか?って言われたけどオニーチャンにはユキさんが居るから断った。

大体そんな所に斎明悠以外が触るなんて論外だ。


他にも色々教わって、帰ってさっそく頑張った。
ピアスは痛かった…。一気に開けるものじゃないらしい。



オニーチャンが言うには、大事なのはタイミングだって。チャラ男っぽく誘うタイミング。

今は駄目だろう。同じ高校に「山川輝」が上がってきて、斎明悠は嬉しそうだ。

…と思っていると、会長と「山川輝」がデキた。

「山川輝」…どんだけえ〜。愛される奴はどこまでいっても愛されるのか?
全校生徒からブーイングが起こるかと思えばなんか祝福されてるし。


誘うなら今かも、と思ったけど何か斎明悠、余計にやる気になってる。奪おうと必死になってる。
…今じゃ無理かな。もう暫く待とう。


ってゆうか俺、性格悪っ。そりゃ〜愛される側じゃないはずだわ。


そんなこんなで待ち続けて半年。「山川輝」は相変わらず会長と付き合ってて、でも斎明悠は諦められない…って感じ。

誰にもバレないよ、性欲発散するだけだよ、山川輝と似てるよ。

そう言ったら、今なら相手にされるかな。代わりだろーが何だろうが、俺はあの人に近づきたい。そんで絶対、彬も中々いいじゃん、って思わせてやる。


そう思って、髪を黒く染めてカラコン付けて眼鏡を掛けて、俺は斎明悠に会いに行った。







結果は皆さん知っての通り、大成功で〜す。流石俺!





ああ、話しは戻るけど、アキラクンが同じ高校って分かって、オニーチャンを頼ってでも早めに興信所に頼んだ方がいいんじゃないかなって思ったんだよ。

オッサンが言ったことは本当なのか。嘘なのか。俺はアキラクンに会った方がいいのか。会わない方がいいのか。

初めて会った、血の繋がった家族だもん。会って、喋りたい気持ちも大きかった。
でも、いーんちょがアキラクンが好きだって分かって、妬む気持ちも大きくなった。


大分悩んで、結局なにもしなかった。怖かったんだよねえ。オッサンが言った事が本当だったら、俺アキラクン憎む気持ちが止められそうもないもん。
アキラクンのせいじゃないって分かっててもね。





けど、門脇のオッサンが死んだ。

調べてもらうべきなのかな?オッサンが嘘を吐いたかどうかは、もうそうしないと分からない。

でも勇気が出ない。恐い。
今まで、あんなオッサンが言ったのは嘘に違いない、って思いが俺を助けていたのは確かだ。



オニーチャンに貰った名刺を眺める。
××興信所 坂本 創祐

携帯番号と睨めっこしていたら、俺の携帯が鳴った。
びっくーう!

色々思い出していた内に、結構時間が経っていたらしい。
夜0時ちょっと前。

「…もーしもし、」

『…どうした?今日はテンション低いな。』

やっぱりいーんちょ。

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