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俺の欲しいもの。





そんな感じで頑張ってる時。
昼食を持って、俺はひとりで職員室に行っていた。

いーんちょその辺に居ないかなあ。居ないよなあ。目で探しながら歩いていると、いーんちょではなく、なんとアキラクンが目に入った。…うわあ。

取り敢えず勝手に気まずいので近くの空き教室に入る。早く通りすぎて〜授業始まっちゃうよう。

念じながら黙っていると、カラ…とドアが控え目に開いた音がした。…まさかね。まさかだよね。思って振り替えったらまさかでしたー!アキラクンです。

「あ、あの…すみません、急に教室に入っていったから、どうしたのかなって…具合、悪いんですか?保険医さん呼んで来ましょうか…?」

…本当、まさかだよ。

「…いんやー。大丈夫です〜ありがとお。」


「あの、で、でも…顔色、悪いですよ…っ。あ、わ、綺麗な瞳…って、す、すみませんっ。」

「……いーえ。褒めてくれてありがとお。」
山川アキラクンにだけは褒められたくないよねえ。

「あの、どこかお身体悪いんですか?実はこの前も急に空き教室に入って行く所を見て…。」
アキラクン見たら絶対どっかに行く様にしてるからねえ。

「な、何かあるなら、僕なんかじゃ無理でしょうけど保険医さんに相談したら……」
しつこいかな?って焦りながらも一生懸命心配してくれているのが伝わってくる。

「…ごめんねえ。俺保険医あんまし好きじゃないんだあ。もう俺の事気にしないで行っちゃって〜。」
会った事もないけど。超健康体だからね俺!

…顔色が悪いのはアキラクンに会っちゃったからです。どうしよお、苛々してきちゃった。イイコ過ぎて、だろうな。俺ひねくれてる〜う。

「でっでも、細身の男の子が人気のない所に居たら危ないってよく先輩に言われるんです…っ」
その先輩って、…悠先輩?

「えっと、…あっ悠先輩に来てもらいます!教えてくれた先輩なんですけど、あの、先生じゃないし風紀委員さんなので、ここに1人で居るより安全だし…!」

―――っ。

「本当、大丈夫だからあ。お節介って焼きすぎはただのウザイ子だよお。」

俺がそういうとアキラクンは傷付いた顔をして、すみません…って泣きそうになる。
「だけど、あの、具合悪かったら他の先生呼んでくださいっお願いします…っ」
言いながら走っていった。







「っ…。  も、何なの…何で俺はこんななのにあいつはあんな純粋なのっ」
何が違う?家?育ち?環境?もし俺が――れてなかったら、ああなってた?

「…簡単にっいーんちょ呼ぶとか言うなよ!いーんちょが自分をどれだけ好きだと思ってるのっ俺がどれだけいーんちょを好きだと思ってるのっ!!」
壁をドンッと殴る。手が痛い。
俺がいーんちょに会う度、どれだけ緊張してるかあいつは知らない。いーんちょにメール一本送れないのに。いーんちょを傷付けるあいつが呼ぶの。

「…もっ最悪…あんなの見たら、俺が勝てる訳ないじゃん…!」
今のが本当の善意だって事くらい分かってる。どうやったらああなれるの。何したらああなれるの。
愛され方も知らないのに。


親も兄弟も家も要らない。あいつが当然の様に持っているものなんていらない……!

「いーんちょだけ…「さいみょうゆう」だけが居てくれたら俺は幸せなのに……!!」
それすらもあいつは持って行く。俺が心から欲するものを事如く、全て持って行く。
同じ―――なのに。




*




試験前日。その日は9時に寝ました。
あれから俺は何も考えないように、ただ浸すら勉強した。
忘れろ、と自分に言い聞かせて。
…なんか入試んときみたい。その時より頑張ったけど!
試験は午前で終わったりせず、三日に分けて行われる。






「お、わったーあ!!!」

試験三日目。
終わった、終わったよう……

「お疲れ様〜どうだった?あきちゃん。」

「ばっちし!絶対イケた!」

「そりゃよかったな。答案帰ってくるのは来週か…。ドキドキだろ。」

「はっそのへんの小物と一緒にしないでくれるかしらあ?もう確信しちゃってるから。間違いないから。」

「あははっね、ね、じゃあさ、週末遊び行こうよ!あきちゃん全然構ってくれなかったしぃ。」

「そうだな。行くか。申請しとく。」

「おお〜!行きたあい!どこいく?どこいくう〜?」

「僕買い物したいなあ。あっあと見たい映画あるの!」

「いーな。俺も服買いたい。」

「んじゃカラオケも行こ〜!俺AKB熱唱する〜!」


週末の予定が決まった所で解散した。

今日は〜資格の勉強ちょこっとしたらテレビ見てダラダラしよ〜っと。

試験終わってみんな浮ついてるから、いーんちょは忙しいだろうし。



と思ってたら携帯が鳴る。えっいーんちょ?
見るとオニーチャン。メールじゃ〜ん。

『試験だったんだって?お疲れ〜お前日曜ヒマだろ?ちょっとうち来いよ。』

日曜か〜。まあ、皐月たちと遊び行くのは土曜だしいっか。

オーケーの返事を出して、携帯を閉じた。
オニーチャンどうしたのかなあ。家にってことは、ユキさんと何かあったのかな。ま、行ってから考えればいいや〜。

いつの間にか寝てた。




*




「おっはよーう!」

「おせーよあきら。」

「ごめえんね。バスまだ来てないよね?」

「来てないよ。もーあきちゃん寝癖ひどいよ。」

「あっうそん。直して〜。」
頭を屈めて皐月に直してもらう。皐月背えちっちゃいんだよね〜。

「馬鹿、自分でしろ馬鹿。」

祥平に叩かれる。しかも馬鹿って2回言われた。嫉妬?嫉妬ですね祥平さあん。

ニヤニヤしながら自分で直していると、祥平にまた叩かれた。

「あっバス来たよ。」

学園が山ん中にあるから、バスは1時間に1本しかない。

3人で乗り込んで、とりあえず買い物に。

「あきちゃんこれ似合う〜!」

「ホント〜?あ、これにこれ、合いそう。」
「お、いいんじゃね?俺だったら黒だけど。」

「色違いで買っちゃう?」

「マジ御免。」

散々騒いで、二人は結構買ったけど俺は買わなかった。

お金ないんだよーう。大体、二人が見る服って全部高いんだよ!この坊ちゃまが!

お昼食べて休憩して、映画感館に。皐月がチョイスしたのはバリバリアクション。この子、外見裏切ってるよね…。
楽しかったけど。

んでカラオケに。3時間くらい熱唱した。


俺がマイク離さないから祥平が勝手に演奏中止ボタン押して別の歌いだしたり、それに対抗して俺が歌ってた曲を大声で続きから歌ったり。皐月は爆笑してた。……のどいたい。



散々楽しんで、帰りのバス。うちの学園の門限、22時だからね。

「あ〜喉痛いよーう。」

「あきらのせいでな。」

「あきちゃんのせいでね。」

え〜。

「ひどいっだって歌いたい気分だったんだもん〜。」

あるよねそーゆうとき。

「ま、映画も楽しかったしな。」

「あれすごかったねー!もういっかい見たいくらい。」

「見に行けば?かっこわらい。」





寮に着いたのは22時5分前。ギリギリだあー。
その場でふたりと別れて、自室に戻った。


風呂に入って資格の勉強をしていると、オニーチャンからメール。

『明日何時くる?』

『昼過ぎには行けるよ〜。』


オニーチャンは了解メール返って来ないから、そのまま携帯を閉じる。

けどすぐまた鳴った。あれ?めずらしー。
と思ったら電話だ。しかもいーんちょ!

「もーしもーし亀よ。」

『…今日来られるか?』

「あれっツッコミなし!?あきら恥ずかしいっ」

『テンション高えな。』

「まーねん。行けますよ〜何時?」

『今から。』

「はーい!」


今は0時過ぎ。急いでいーんちょの部屋に行った。

「こんばんわに〜。なんか久しぶり?」

「ああ、何か試験頑張ってたみてえだし。」
きゅんっ
あ、いまきゅんってきた!

「で。出来は?」

「ばっちし!…だと思いたい。」

皐月たちにはああ言ったけど、ぶっちゃけ自信とかない。10位以内が中等部から変わってないの位知ってるし、そのまま全国模試の順位とも勿論知っている。

「ま、頑張ったな。」

そう言って頭を撫でてくれた。…頭を撫でてくれた!
うわ、うあー!!悠先輩って呼んでないのに!撫でてくれた!

「う、うん。ありがとー。」

いーんちょはふって笑って、リビングの方へ行った。
…絶対顔赤いよ〜。




*




日曜の10時くらい。俺はまたバスに揺られてます。

今日はオニーチャンとこ〜。着くのは13時くらいかな?遠いんだよねえ。

でも資格の勉強してたらあっという間だった。ちょこちょこ進めてる内に結構いくな〜。


オニーチャンちは、5階建てマンションの4階。2LDK。

チャイムを鳴らすと、きれーな男の人が出てきた。

「あきくん!久しぶり。」

「ユキさあん!お久しぶりです〜。今日はお邪魔しちゃってすみません〜。」
ユキさんはちょっと笑う。

「気にしないで。どうせ咲人が呼んだんだろうし。」


家の中に入れてもらって、オニーチャンに会った。

「オニーチャン!久しぶり〜!元気だった?元気そうだねえ!最近会えなかったもんね〜あきら悲しかった〜あ」


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