俺の欲しいもの。
4
そのまま口は塞がれながら、ズボンとパンツを脱がされた。
「ちょっ…いーんちょ、」
「黙れ。悠先輩、だろ。」
あー、いーんちょかなりいらついてるなあ。
「悠先輩…、」
いい子、という風に頭を撫でられ、夢中で呼ぶ。
「悠先輩、悠先輩…あっ悠、せんぱい…」
「あきら……っ」
最初と同じ様に、性急に抱かれる。違うことは、ここが玄関ってだけ。
いーんちょが切なそうに、愛しそうに呼ぶあきらって名前に、ちょこっと涙が零れた。
優しく呼ぶあきら、に無意識に勘違いしちゃってたのかなあ。俺って我が儘。
「…悪い、」
終わった後、謝られた。
「別にーい。暇だったし、たまに激しい位はむしろドンとこいだよう。」
てゆーか帰れって言われなかったことが嬉しい。
「…そうか。じゃ、シャワー浴びてさっさと帰れ。」
あ、言われた。
「あいあーい。」
いつもの様にバスルームを借りる。だけど何と、何と!いーんちょが入ってきた!
「っえ?」
「あ?仕事があんだよ。別にいいだろうが、散々見てるんだし。」
「ぜ、んぜんいいけど〜。」
いいわけないっどうしよう!?そりゃ確かに散々見られてるけどそれはだってそういう時な訳で、しかも大体薄暗かったしこんな明るい所で、しかもいーんちょの身体とかちゃんと見たことなんてないのにっす、すごい筋肉…スラッとしてるのになんでこんなガッチリしてるの?贅肉とか一切ないし肩幅ひろってゆーか改めて並ぶと背え高っう、わ、ちょ、これ以上はちょっと…
「そんなに見惚れてんなよ。」
バッといーんちょを見上げるとニヤリと意地悪そうに笑っていた。
「い、やべつに、いーんちょ身体キレーだねえって。なんか運動やってんの?」
「ああ、キックボクシングと日本の武道は一通り。」
知ってるけど。
まだニヤニヤ笑ってる。俺の顔が赤いのに気付いてるんだろう。
「へえ〜すごいねえ。俺なんもやってないよ。」
「身体見ればわかる。細すぎだろ。体重いくつだ?」
か、身体見ればとか…
「アキラクンと一緒だって言ったじゃ〜ん。」
「知らねえから聞いてんだろ。」
「え?そうなの?ちょっと意外〜。」
「いいからさっさと言えよ。」
「ん〜とねえ……54キロ」
言うの恥ずかしいんだよねえ。ヒョロすぎでしょ俺。
「はあ?で、身長170とかだろ?…骨と皮じゃねえか。」
「うるさいなあ〜。いーんちょと一緒にしないでよう。」
いーんちょは188センチもあって筋肉もあるから76キロくらいだったかな。それでも軽い方だよね〜。肉がないからか。
だいぶ緊張は解れた。いーんちょの方はもう見ないけど。
「なんか武道しろよ。この学園じゃ危ない。」
しっ心配!?心配してくれてんの!?
「…え〜だいじょーぶだよ。俺襲われたりしたことないし〜。」
「…その顔で?」
ちょっと驚いた顔された。そうなのよ〜実は俺も結構美形の部類。普段はめんどくさいから、不自然じゃないように髪セットして目立たなくさせてるけどね。
入学したばっかりの頃は、髪色で結構目立ってたからダテ眼鏡もしてた。顔隠す用に。
んでもって今は髪も黒くしたから、ますます目立たないだろう。
「まあね〜ん。多分いーんちょも、校内で俺に会っても分かんないと思うよ〜。」
「ああ、隠してんのか。」
「うん。どっかの馬鹿みたいに、カツラです!ビン底です!って感じじゃないけど。」
言ったらいーんちょは笑った。どっかの馬鹿、がアキラクンに惚れた転校生だって分かったからだろう。
いーんちょが先に上がって、俺もゆっくり泡を流して服を来てリビングに行くといーんちょはもう仕事をしていた。
「そんなに大変なんだね〜風紀委員長って。」
今俺が上がったことに気付いたのか、いーんちょが顔を上げる。
「いや、風紀の方も忙しいが、今は親の子会社預かってんだよ。そっちの忙しさが半端じゃない。」
「えっ!?仕事って、会社!?もうそんな仕事してんの!?」
いーんちょはちょっと苦笑して言う。
「次男って言っても、後継者候補には俺も入っているからな。」
「でも、風紀の仕事もあんのに…大変だねえ、いーんちょ。」
全国でもトップに入る進学校の勉強、風紀委員会の長としての仕事、会社だって預かってるって言うからには経営もしてるんだろう。
遊ぶヒマもない所か、寝るヒマもないんじゃ?
高校生なのに……。
俺の眉がよっぽど寄っていたんだろう、指で解してくれながら(ぎゃ〜っ)
「ま、学校の勉強は教科書読むだけでいいしな。委員会の仕事だって下が優秀だから俺は結構楽させてもらってる。会社に到ってはガキの頃から経営学だのなんだのって学ばされてんだ。要領は分かってきてるよ。」
簡単そうに言うけど、そんな簡単なもんじゃないだろうなあ。
だけど俺が首突っ込むことでもない。
「ふーん…。まあせいぜい倒れないように頑張ってね〜。俺帰りまあす。」
出来るのは、性欲発散させてさっさと帰って邪魔しないことくらいかなあ?
「…そうか。気をつけて帰れよ。」
「はーい!いーんちょオヤスミぃ〜。」
いーんちょの部屋を出て、自室に向かう。
…そーかあ。もう会社経営しちゃってたりするんだね。
いーんちょの役に立ちたい。今からでも、将来的にも。下っ端でも、いーんちょの会社に入りたい。そのためを思って今だって勉強してる。
だけど俺が必死でしてる学園の勉強だって、いーんちょには片手間で一位を取れる。
……こんなんじゃ駄目だ。俺が今までしてたのなんて、努力なんて言わない。もっと、頑張らなくちゃ。いーんちょと並べるなんて思ってない。それでも、役に立ちたい。出来る奴だって思われたい。
……だけど、どうすればいいんだろう?会社のことなんて、何にも知らないし。
とりあえず、学園の勉強を頑張ろう。もっともっと。学年5位には入れるように。そんで資格の勉強をしよう。取って置いた方がいい資格、あって困らない資格。
目標はできた。あとはやるだけ。
*
次の日、俺はどの資格があるか調べると同時に期末試験に向けて猛勉強していた。
期末試験まで1ヶ月ちょい。
「…あきちゃん?なんか本気だね。」
「マジだ。なに?期末に向けて?お前そんな必死になる必要なくね?」
「うん。俺、期末は絶対5位以内に入るから。」
「ええ!?5位って学年で?」
「おまえ中間は23位だったろ。十分じゃねえの?」
この学園は一学年700人くらい。マンモスなんだよね、しかも大体お坊ちゃま。
「そうだよ、特待生の条件は30位以内でしょ?余裕じゃん。」
「この学園で5位って相当だぞ。本気で…」
「うーるっさああい!俺ホンキなの!マジガリ勉なるから、ちょっと本当ごめんけど黙ってて!?」
「…わ、悪かった。」
「…が、頑張ってね。」
「うん!ありがと!」
(あいつマジだな。)
(だね。5位って…難しいと思うなあ。)
(俺も。10位までは大体、毎回同じ奴だしなあ。その10人そのまま全国模試上位10人。)
(うん…まあ、あきちゃんがあれだけ本気になったらどうなるかも分からないし、応援しとこっかあ。)
(だな。弁当も作ってないみたいだし…パン買ってきてやるか。)
あれから、朝は早起きしてご飯食べながら勉強、、授業は常に深く理解できるまで突き詰めて、授業後は勉強、昼は握っただけのお握り食べながら先生の所に。トイレ中は携帯のネットで資格のこと調べて補習も出る。補習の後にまた先生とこ行って、帰って3時くらいまで勉強。
いーんちょに呼ばれない限りこんな感じだった。
いーんちょには、痩せたか?って聞かれたから
「俺期末で5位に入るから。入ったらご褒美くれる?」って言っておいた。拒否られたけど。
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