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俺の欲しいもの。



チャイムを鳴らして入ったら、眉をしかめられた。あ、アキラクンバージョンじゃなかったからかな?

「…シャワーは?」

「いんや、浴びて来たからだいじょーぶ。手だけ洗わせて〜。」

洗面台を借りて、鏡でチェック。
見事な変わりっぷりだよねえ。俺のこと知ってる人でも、たぶん分かんないよコレ。

「す、すみません、ありがとうございました…。」

戻ったらアキラクンになりました〜みたいな。笑える。

いーんちょは書類を読んでいた。本当、大変だねえ。ま、俺の前で読んでるってことはそんな重要なやつじゃないんだろう。


「…シないの〜?」

俺が戻ってちょっとしても、まだ書類読んでる。何していいか分かんないよ〜。

「もうちょい待ってろ。」

え〜…いや、全然いいんだけど…手持ち無沙汰っていうか…先にベットルーム行くのは変だよね?期待してます!みたいな感じで。いやでもそーゆうことしに来てるんだし…。テレビも駄目だよねえ。邪魔になるだろうし。携帯いじっとこ。




そっから1時間くらいして、やっといーんちょが顔を上げた。終わったみたい。

「悪かったな。…何してる?」

俺が携帯から目を離さないからだろう。だけどちょっと待って〜!いま625点なの!

ひょいっといーんちょが俺の携帯を覗き込んだ。

うわっ近っっっ

思わずそっちに意識がいって、気付いたら携帯にはゲームオーバーの文字。

「あっ、ああぁぁあ!!」

自己最高得点だったのに!俺のばか!

「…ケータイゲームか。すげえな、625。」

え、えへへ〜

「でしょ〜得意なんだあ。ってかいーんちょこのゲーム知ってるんだね。」
そっちが意外だよ。


「小学生んとき1回だけな。」

「へえ〜、得点は?」
つい興味が出る。

「確か、1400くらいだったか。」

ががーん!

「ほ、ほんと?」

「ああ、飽きて途中で止めたけどな。」

…ってことは飽きてなかったらもっと行ってたのか!初めてなのに!

「ま、周りは200も行ってなかったから625はすげえんだろ。」
嬉しくない!

「……ショックだあー。」

本気で言って落ち込むと、ちょっと笑われた。

「いーから行くぞ。お望み通り、今日は優しくしてやる。」

言われて腕を取られて、赤くなった顔を隠すように、拗ねた顔をして着いていった。




*





あれから3ヶ月。いーんちょには週2、3回位の頻度で呼び出されてる。

あんなに性急だったのは最初だけで、次からは優しく、本当に愛されているかの様に抱かれる。アキラクンを抱いてるつもりなんだから、当然なのかも?

部屋に行ってもまだ仕事をしていることが多くて、俺は大体暫く待ってる。遅く来ることも出来るけど、その分一緒に居られるんだからまったく問題ナシ。いーんちょに言われない限り今の時間に行くつもり〜。



「あきらーメシ行くぞー。」

祥平に返事を返して、お弁当を取り出す。

「ね、ね、昨日のさ、北〇景子のドラマみた?」

皐月はミーハーだ。タイプはちょっとキツメの人。

「見たーあ!かわいーよねえ。俺はのんちゃん派だけどっ」

「俺も佐〇木希派だな。ドラマは見たけど…。」

見たのかよっ!まあどっちもかわいーよねえ。

「えーふたり共!?」

「どっちも男の理想だよな。キツめの美人と天使。」

「ぶはあっ祥平が!祥平が天使だって〜。この人本気ですよう。」

「うっせーよ!」


馬鹿な話ししながら食堂着いて、ご飯を食べる。


「あれ?今日は何か静かじゃない?」

そーいえばそーだなあ。

「会長とか委員長が来てねーからだろ。」

「めずらしぃねえ。どうしたんだろ〜?」

皐月と顔を見合わせていると、祥平が呆れた顔をする。

「お前らほんっと噂に無頓着だな。会長は山川の手作り弁当。御礼っつって会長が山川にキスしたらしいから、委員長たちは落ち込んでんだろ。ちなみにディープな。」

……そうなんだあ。
アキラクンが気を遣ってか、誰かの前でラブラブすることって全然なかったらしいし。衝撃デカイだろうな。


「すごいねえ祥平。」

「ほんと。祥ちゃん詳しいね。」


「お前らが知らなすぎるんだよ!今学校中この話しじゃねーか。」

そうなの?

……いーんちょ、だいじょーぶかなあ。メール送ってみてもいいかなあ。うざい?首突っ込みすぎ?ってかメアド知らないよ!携帯会社違うから、番号だけじゃむりだし…かといって電話はそれこそうざいよね!

「どうかした?あきちゃん。」

皐月が俺のこと見てた。あ、無言だった?俺。

「どーもしないよう。ディープなチューかあ。やるねえ会長。」

「見せつけてんだろうな。」

「大変だよね、付き合った後も心配なんだろうし。」

まあぶっちゃけ、気ぃ持たせてんなよ!って感じだけど。

「モテるのは本人のせいじゃないからねえ。」



*




夜22時。電話が来た。いーんちょから。

『今すぐ来い。』

「えっ…あれ?もしもーし」

切れた。2回目?
いーのかなあ。まだ早いけど。昼の事が原因なんだろうなあ。頑張って人に会わない様に行こう。


って思ったけど会っちゃった。会長とアキラクンに。
たぶんコンビニでも行く所だったのだろう。


「……。」

すれ違っただけだけど、会長こっち見てた。アキラクンの真似してるって気付いたかな。気付くよなあ。とりあえずいーんちょの部屋は通り過ぎて角を曲がる。
そおーっと覗いてみると、もう居ない。ダッシュでいーんちょの部屋に行って、チャイムを鳴らす。
ドアが少し開いて速攻部屋に飛び込んだ。


ふー、と息を吐いていると、部屋が真っ暗な事に気付いた。あれ?と思うと同時に噛み付かれる。口に。…これも2回目だあ。


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あきゅろす。
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