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俺の欲しいもの。
11


「もしもーし!」

『ふ、やっぱテンション高え。』

「まあねん!やっばい嬉しいから〜!いーんちょはどうしたの?あっしゃべく〇のお誘い!?」

期待して聞く。

『まあな。部屋来いよ。』

「行きます〜!今からでいーい?」

了解を貰って、ソッコー準備する。

チャイムを鳴らすといーんちょはすぐに出て入れてくれた。

「それで?聞くまでもないが、テストはどうだった?」
ちょっと笑いながら。最近いーんちょ、笑ってくれるなあ。

「驚いてねえ?なんと〜2位でしたあっ。」
そう言うと驚いた顔をしてくれた。

「へえ、凄ぇな。って事はお前、足立彬?外部だったのか。」

「あっそういえば、いーんちょ俺のフルネーム知らなかったね。そうでーす。ちゃんとアキラだったでしょ?」

ここらへんで俺の名前知ってほしいよねえ。

「…そうだな。足立彬か…あ?そういえば、髪も目もプラチナブロンドじゃなかったのか?」

やっぱ俺そのイメージみたいだねえ。

「イメチェンだよう〜。結構前に染めたけど、クラスの人以外誰も気付いてくれなかった…。」
泣きまねする。と、頭を撫でてくれた!

「っていうか、お前って気付かなかったんだろうな。髪でしか覚えてなくて。」
……。

「…結構ヒドいこと言ってるの、気付いてる?」

上目で睨むとニヤリと笑われた。
「勿論。」

ぎゃーす!かっこよす!

「ま、目立たない様に狙ってたんだろ?よかったじゃねえか。」

「まあねえ〜。ってゆうかいーんちょは?何位だった?」
いや知ってるけどね。自分の見に行く前に、知り合いの先輩に教えてもらいました。

「1位に決まってんだろ。それ以外取ったことねえし。」
自信たっぷりないーんちょかっくいーい!

「天狗だあ〜天狗さんがいまぁす。」

ふざけて言うと叩かれた。


んで、またふたりでしゃべ〇り見て、テンション高いままめっちゃ笑ってたら、いーんちょの部屋のチャイムが鳴った。
顔を見合わせる。

「…俺、靴もってバスルーム行ってるね。」

「いや、…ああ。悪い。」

「いーえ。帰ったらおしえて〜。」

こっそり靴を取りに言って、音を立てないようにバスルームに入った。



「…はい。」
いーんちょの不機嫌そうな声が聞こえる。ってか聞こえちゃうよ!

「…柏崎?」
こんどは驚いた声。柏崎って、生徒会長じゃん!

「斎明、あいつ居るんだろう。入れろ。」

「ああ?あいつって誰だよ。」

「足立彬に決まってんだろうが!分かってるんだよさっさと出せ!」

いーんちょがため息を吐く。
「取り敢えず入れ。」

足音がふたり分。…俺?なんで?

「それで?なんで足立彬を柏崎が知っている。」
あ、なんかイラついてる。…もしかして俺に?俺ほんとに誰にも言ってないよ!

「あいつが技と邪魔したに決まってる!何考えてるか知らないが、斎明に近づくのも放っておいてやったのに!」

…話しが見えましぇーん。

「日本語で会話しろ。意味わかんねえよ。」
いーんちょも呆れてる。

「とにかく足立彬を出せ!輝を泣かせた…!」

「…ああ゛?」
一気に不機嫌になったよいーんちょ!ちょ、俺心当たりないんだけど!でもアキラクンってことは、山川家絡みかな?

「だから意味わかんねえって言ってんだろうが。説明しろ。」

「いいから足立彬を出せっていってるんだよ!」

…会話にならないねえ。
いーんちょも同じ事思ったのか、ため息吐きながら俺を呼んだ。

「あきら、悪ぃけど出てこい。こいつじゃ話しになんねえ。」

「はあーい。って、俺も意味不明だけどね。アキラクン泣かせたってなにぃ?」


俺が出ていくと、凄い勢いで会長に掴み掛かられた。

「惚けるな!分かってるんだよ、お前が俺達の邪魔するために2位に入ったんだろう!」

…はあ〜??2位って、テスト順位の事?

「柏崎!落ち着け。風紀の前で暴力働いていいと思ってんのか。」

いーんちょが落ち着いた声で言うと、会長は舌打ちして俺から離れた。

「ね〜どうゆーこと?2位って、テスト順位の事でしょ?なんで俺がアキラクン泣かせた事になんのさ〜。」
ホント疑問。

「そうだな。柏崎、説明しろ。」


会長はちょっと落ち着いたのか、もう一度舌打ちして話し始めた。



「…この間輝の家に、付き合ってるって言いに行ったんだよ。あいつは家の事を1番気にしていたから。かなり反対されたけど、輝が認めなきゃ家を出るって言って、ようやく認められた。ただ、条件があった。」


まあ色彩で俺捨てるくらいだもんね〜男同士とか論外だったんでしょ。
でも認められたってことは、それほどアキラクンが溺愛されてるってことかな?


ってゆーか話し見えてきたぞう。

「それが、次の試験で5位以内に入ること。あっちはそれがかなり難しいことくらい分かってたんだろうな。だけど、輝は頑張った。俺と居るためだって、寝ないで頑張っって、テスト返却週間は絶対にイケたって喜んでたんだ!なのに…っ」

…あ〜、ね。

「いつものトップ10の奴ら、6人には勝ってたんだ!5位になるはずだったのに、順位は6位…!お前が、お前が2位に入ったからな!輝は今どれだけ泣いていると思う!?」
う〜ん…それって。

「…八つ当たりか。」
いーんちょが呟いた。

「だねえ。そんなの俺に言われても〜。」

「煩いっ!俺だって普通だったら仕方がないって、もう一度説得しに行こうって言ったさ!だけど2位の奴が、ひょっこり出て来た奴が足立彬だと!?そんなのこいつが邪魔したに決まってる!」


あ〜…会長、知ってるんだなあ。

「…どういう事だ?」

「こいつがっ自分の母親と同じ事をしたって事だよ!輝を恨んでるのか?嫉んでるのか?だからってこんなやり方はないだろうっ!」

顔が強張る。…母親と同じ様に?会長の言葉からすると、門脇のオッサンが言ってたことって間違いじゃなかったのか。と考えていたら、いーんちょが会長を殴った。

会長を殴った。



ええええ?

「な、にする斎明…!」

「はぁ、てめえは落ち着け。一方的な言い分をまくし立ててんじゃねえ。」
そう言い捨ててこちらに来る。手を俺に伸ばして、
…頭を、撫でてくれた。

「コーヒー煎れに行く。手伝え。」

いーんちょの部屋のコーヒーは本格的だ。豆を引く所から。だから時間が掛かるんだよね。
お互い無言で煎れてリビングにもどると、会長は完全に落ち着いていた。


「…ありがとう。足立、先程はすまなかった。」
人が違うみたあい。

「いーえー。会長が怒った理由はわかったし。でも言っておくけどね〜、俺は俺の理由で、絶対5位以内に入るぞ〜って頑張っただけだよう。」

いちお弁解すると、鼻で笑われた。
「そう。」
ぜったい信じてな〜い!

「だあから〜、何で俺が会長達の邪魔するの〜。大体アキラクン達の条件とか、知ってる訳ないじゃーん。」


会長は眉をしかめる。
「興信所の連中が山川家辺りを探ってるのは分かっている。それがお前の兄という、田嶋咲人の親しい人間だって事もね。」

……は?

「いやいやいや〜その条件出されたのいつよ?先週の話しとかじゃないんでしょ?」
俺が坂本さんにお願いしたの、先週だよう。

「出されたのは先々月。興信所の連中は、3年前からちょくちょく調べていたと聞いているよ。まあ、俺独自の情報網だから山川家は気付いてないだろうけれどね。」


…は?
顔が引き攣る。…3年前?その時俺は中1…門脇のオッサンに家の事を聞かされた頃だ。その頃から坂本さんは調べてた?山川家を?…オニーチャン、山川輝が城静学園にいること知ってた…。


何も言えないまま携帯を取り出す。

「…あきら?」
いーんちょの声が呼んでるけど答えられない。
ねえ、俺の知らない所で勝手に何かしてたりしないよね?
電話帳からオニーチャンを見つけ出して発信した。


コール音が続く。変な汗出てきた…

『…もしもし?』
ちょっと眠そうな声。寝てたのかもしれない。

「っねえ、どういうこと?3年前から坂本さんが山川家の事調べてたって何?俺に黙って、俺の知らない所で調べさせてたの?俺の事なのに?」

『…っ』

息を飲む音が伝わってきた。頭が熱くになる。

「…本当なの?お、俺が門脇のオッサンの言った事、嘘だって信じようとしてた時オニーチャンは本当だったって知ってたの?俺は死んだことにされて母さんも死んで、山川輝だけが愛されてたって、本当だって知ってたの!?」

『彬…っ、』

「だから知ってたんだ、山川輝が城静にいること。それで、俺が少しはデカくなったから、今なら事実を受け止められると思ったって感じ?もしかしていーんちょが山川輝を好きなのも知ってた?それで俺が本当の事知るの怖いって思って、悩んでたことも?時間が経っていーんちょに少しは近づけたから、今なら受け止められるって?  っ俺が苦しんでるとでも思ったの?」

『彬!!…聞け。』



「……っなんなの、同情…!?」
同情されるのが一番キライだ。俺は可哀相なんかじやない!!!!

『…ちげえよ馬鹿。いいか、黙って聞け。いいな?』

…見えないだろうけど頷いた。

『電話で言うことじゃないんだが……お前中1の時、一時期不眠症だったな?』
頷く。門脇のオッサンに会った後から、2ヶ月くらい。

『他の奴から聞いて心配して会いに行って…お前は話したくないって、ドア開けないからぶっこわして入った。』
それから暫く、俺にプライバシーはなかった。

『…お前は髪を自分でボロボロに切ってて。2ヶ月でやつれて、何があったって無理矢理聞き出したら、泣きながら俺は要らないんだって。』

『全部話してくれたな。同じ父親から生まれて同じ名前なのに、そいつは愛されてるって。自分の母親は死んだらしいって。自分は施設に居て、毎日虐められて馬鹿にされて生きてきたのに、髪と目の色が違うだけで、そいつは両親からも周りからも愛されて育ってるって。』

本当は、悔しくて理不尽でこの色を見たくもなかった。

『途中で嫌がって逃げようとしても門脇ってオッサンに無理矢理聞かされたって。だけど、そんな怪しいオッサンが言うことなんて嘘かもしれないってお前が笑うから。』


『お前のこと可愛がってる身としては、そうに違いないって言うしかないだろ。でも門脇が本当は何考えてるのかも分からなかった。だから調べた。お前は本当に捨てられたのか。山川って家は外道なのか。もし違ったら、そうするしかない理由があったなら、お前に「家族」をやれると思った。』


「……結果は、門脇のオッサンが言う通りだったんだね。」




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