俺の欲しいもの。
10
時間がやばくなった所で切り上げて、急いで学校に向かった。
……その日返ってきたテスト。90点代だったー!しかも全部90点後半!
「あきら〜何点だった?てめえ昨日は何も言わないで帰るし。」
無言で答案洋紙を見せる。
「え…!?90後半…?え、あきちゃんこれ本当!?すごい!すごいよあきちゃん!!」
「は!?ちょ、マジで!?昨日は何点だったんだよ?」
「きゅ、きゅうじゅってんだい…」
二人が叫ぶ。
「マジ!?マジかよ!あきらお前すげえ!マシ5位以内いくんじゃねえ!?」
「あきちゃん!何で昨日教えてくれなかったの!?お祝いしなきゃ!パーティーしなきゃ!」
クラスの奴らも二人の騒がしさに気付いたのか、寄ってくる。足立すげー足立半端ねーとか聞こえるけど、頭に入ってこない。
「今日も90点代…てゆうことは昨日のは奇跡じゃない?…本当に?」
徐々に理解していくと、またテンションが上がってきた。
「マジ!?マジなの俺!本気と書いてマジと読むの俺!?え、俺って天才?天才だったの?やばいよ俺天才!!」
そのままクラス皆で盛り上がって、談話室に行ってお菓子パーティー。
酒も呑んでないのに皆テンション高いまま、雑魚寝した。
絶対みんな騒ぎたかっただけだよねえ。
いや馬鹿らしいと思うかもしれないけど、90点代って本当すごいんだよ。自分で言うのもなんだけど。それを言っちゃうのが俺だけど。
しかも、今日返ってきたのなんて全部90点後半!半端ないよ俺!
次の日、みんな焦って部屋戻って準備して教室に来た。俺のテストが返される度、いっかいシーンとなって90点代だったら目茶苦茶盛り上がる。それが毎時間続いた。……な、なんかプレッシャーなんですけど…。
今日も大半が90点後半で、俺はもう喜びっぱなしだった。部屋に戻って、そのままのテンションでいーんちょに電話しちゃったくらい。
『もしも…』
「いーんちょ!聞いて聞いて聞いて〜!おれ、今日までのテスト全部90点代!すごくない?俺すごくない!?5位以内入っちゃうかも〜!」
出たと同時にいーんちょの声を遮って喋り出すと、怒りもせずに驚いた声が聞こえた。
『凄えな。本気で入れそうだ。』
「でしょ〜!やばいよう〜嬉しすぎてあきらどうにかなっちゃう!」
いーんちょは笑った。
『はは、ご褒美にどうにかしてやろうか?』
「い、いやん!いーんちょのえっち!そういう意味じゃないです〜。」
『残念だな。返って来るのはもうあと4教科くれえか。その時点でその点数じゃ十分期待していい。』
「本当!?いーんちょにそう言われると期待しちゃうよう〜確信しちゃうよう〜。」
『ふ、しちゃえば。っと、悪ぃ仕事だ。』
後ろで委員長すみません、って声が聞こえた。
「あっうんごめんねいきなり〜!聞いてくれてありがとお!お仕事頑張って〜!」
そう言って通話を切って、…気付いた。
俺いま何した!?いーんちょに電話!?得に用もないのに!うざっ俺ぜったいうざい子!
あ〜あ、無意識に調子乗ってたみたい〜。
自重自重……でも嬉しいー!いーんちょ、「うざい」だけ言って電話切ったりしなかった!なにそれも期待していいの!?
はっと気付く。いやだから自重自重……でもでも〜!
を繰り返して、やっと落ち着いた。
勿論俺だって、いーんちょの大切な人になりたい。自重して、うざがられないようにして長く側に居れば、情くらい湧くかもしれないでしょ?
アキラクンはこんな計算しないんだろ〜ね〜。
愛されるからそんな事する必要がない。だからこそ愛される。
すごいねえ〜。
*
次の日もテストは90点代。俺もクラスも余裕が出て来て、スゲーとは言われるけどそこまで盛り上がらなかった。だけど6時間目、法学基礎。
「…なにこれ現実?」
毎回言われる「何点だったー?」に返事が出来ない。
祥平と皐月が覗き込んで、固まった。
「足立は満点だ!特に問24。正解だったのは学年で足立だけ!…よく頑張ったな。先生は鼻が高い!」
俺らが黙っていると、先生が言った。
自分が受け持ってるからって事だろーね。
「満点…ってことは100点!?」
「はあ!?100点って…」
いきなり騒がしくなった。え、ええと〜……
「そっかあ…俺、天才だったんだあ…」
しみじみ言ったら祥平に叩かれた。
「馬鹿!お前リアルにやばいんだぞ!半端なく凄いんだぞ!?」
「そ、そうだよね…俺は、俺は天才だあー!!」
叫んでも誰も突っ込んでこなかった。
ってゆーか周りうるさい。皐月なんかまだ固まってるし。
どうしよういーんちょに言いたいっ!でもまた電話するのとかうざすぎるよね〜。
来週、順位が出て5位以内だったら言っちゃお〜!
*
その日の夜。俺はまたオニーチャンに貰った名刺を眺めていた。
でも今日は一味違うぜっ決意はした。調べてもらう。携帯を手にとり、番号を入力していく。
ボタンを押して、コール音を聞いていると決心が鈍ってきた。
どうしよう。止めちゃおうかな。切っちゃおうかな。今ならまだ…
『はい、もしもし。』
でっ出ちゃったあー!
「あっあの、足立彬と言います。夜分遅くにすみません、田嶋咲人に名刺を頂いて…。」
『ああ、足立さんですね。お電話お待ちしておりました。』
「すみません、遅くなってしまって。」
『いえ、咲人からいつまででも待つようにと言われておりますから。連絡を下さったと言うことは、宜しいのですか?』
「…はい。宜しくお願いします。 あの、咲人さんからは何を調べて頂く様に言われていますか…?」
オニーチャンはアキラクンが城静学園に居ることも知ってた。なんでだろう?
『そうですね…。主に足立さんの母に当たる方の事、出生の際の出来事、山川家現当主、現奥方の事。それから山川輝の事と、門脇という男のことでしょうか。』
…俺の知りたいこと全部じゃん。さすがオニーチャン!だけど…
「あの、もうひとつお願いしてもいいでしょうか?」
『勿論構いませんよ。何でしょうか?』
「…山川輝が俺の存在を知っているか…お願いします。」
『…分かりました。では終了次第、連絡させて頂きます。』
「はい。お手数ですが、宜しくお願いします。」
それを最後に電話を切って、大きく息を吐いた。
こうゆうのって、どれくらい時間掛かるんだろう?1ヶ月?2ヶ月?そんくらい掛かるよなあ。
…調べようと思ったら分かる、って勝手に考えてたけど、実際わかるのかな?
オカーサンの親戚の人が調べたかどうかなんて知らないけど、俺に何も言ってこないってことは死産じゃないって知らないんだよね。
…大丈夫かなあ。
*
今から試験結果見に行きま〜す。オラどっきどきなんだ。普通な顔してるけどね〜!
なんと!満点が12科目中2つもあったんだよね!!金曜日の最初にもらったテストも100点でした〜ぱちぱち。
やばいでしょ〜コレ期待すんなって方がムリでしょ〜。
張られるのは上位50位。昼休みの前に張られるから、みんなソッコー見に行くんだよねえ。
「あきちゃん凄いよー!絶対5位になってるよ!」
「だな〜俺小等部からいるけど、満点とか自分の目で見たの初めてだし。」
「えへへ〜そうかなあ〜そうかなあ〜」
エントランスに行くと生徒でいっぱい。これ見に行けないんじゃない〜?
「どうする…?」
「先にメシ食うか?」
「え〜気になって喉通らないよお。」
…だよな。と行って祥平は先陣切って割り込んだ。…ええ〜さすがお坊ちゃま。
とか言いつつちょっと空いたスペースに体を捩込ませる。たぶんこれ600人は居るんじゃない〜?進学校だからみんな気になるんだよね〜。
やっと見える位置まで行って、見上げる前に祥平が叫んだ。
「あきら!お前2位!すげえよ半端ねえ!」
2位!?てゆーか…
「祥平ほんと有り得ない!自分で見たかったのに〜!」
あ、わり。祥平の声を聞きながら見上げると、驚いた。
いや俺が2位だって言うのも驚いたけど、なあんと6位にアキラクンの名前が。
え、ええ〜?トップ10って代わったことないんじゃないの?
取りあえず人が多すぎるから食堂に移動する。
「あきちゃん!2位って本当!?凄いよお!」
皐月は潰れちゃうから待ってたんだよね〜。
「ありがとお〜!でも6位にアキラクン居たね〜。10人代わったことないんじゃなかったの?」
「そうだったんだけどな…今回はどうしたんだ?」
「まあ11位の人には申し訳ないよねえ〜俺天才ですみませんっ!て感じい。」
ふざけてそんなこと言いながら、昼ご飯を食べてた。そしたら隣のテーブルの、チワワみたいな子達から声が聞こえたんだよね〜。
「ねえ順位表みた?」
「見た〜!山川くんすごいよね!」
「トップ10が代わるなんて初めてだもんね。」
「それより足立くんが凄いよ!」
「ああ、2位のひと!」
「足立くんってあれだよね、外部のプラチナブロンドの!」
「綺麗だよね、あの髪と瞳の色。」
「そうなの?見に行きたいー!」
「たぶん目立つからすぐ見つけられるよ。」
「見かけたら教えてね!」
……隣にいますけど。
皐月と祥平は笑いを噛み殺してる。
「俺、髪染めて正解だったかも〜。」
「そうだね、あきちゃんまた眼鏡しなきゃいけなかったよ。」
「眼鏡もよかったけどな。まあ目立たない方がいいだろ。」
お前ひょろいし、と続けられてちょっとムッとする。
「肉と筋肉が付きにくいだけだもん〜!」
「それをひょろいって言うんじゃないかなあ?」
157センチの皐月に言われてかなり落ち込んだ。この子こう見えて、柔道有段者だからね。
ご飯を食べ終わって教室に戻ると、すごい歓声で迎えられた。2位おめでと〜って。嬉しいなあ。
*
そんで夜。9時30分くらいに、携帯がなる。いーんちょだあ!
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!