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オレがタチでアイツはネコでオマエは?(攻め志望の平凡受け/病み美形攻め)
――キモチワルイ。
「え?」
君の目が、信じられない、とばかりに大きく見開かれる。そりゃそうか。何時だって、誰よりも応援してきた俺がこんな台詞を吐くなんて予想しなかっただろう。
「何?沖田、ごめん…聞こえなかった…」
目線を反らす先には誰が映っているの?鳴らない電話なんて、意味が無いのに、君は掌に其れを握り締めたまま、離さない。曖昧に笑って誤魔化して、自分の気持ち閉じ込めて。
気持ち悪い、って言ったの。
先程吐いた言葉を微笑みと共に、送る。泣いた様な笑い顔を作っていた君の顔が刹那、凍り付く。
ああ、愉快だ。
「楽しい?恋愛ごっこは?」
「…ごっこ、って…沖田…」
「振り向きもしない、あの人を想って泣いて、たまーに話すだけで胸躍らせて。あの人綺麗な奴しか見向きもしないよ?真中さんじゃ無理だって、もう分かってんでしょ?」
じりじり、近寄る。肉食動物が獲物を仕留める様に、ゆっくりと。確実に、近寄る。実際の状況と異なる点は一つ。
狩る方は息を殺してなどいない。目線で、空気で今から君に食らい付くよ、と一心に伝える。さぁ、行くよ、と。
逃げるチャンスは今まで幾つもあったんだ。
君が悪い。
君が悪い。
君が悪い。
派手な音を立てて壁に押し付けた君の身体は驚く位に軽い。自分が考えていたよりもあった身長差を目の前にして、口角が弛んでしまう。
「ああ、俺が言わなくても直接言われてたね、眼中にないって。可愛い顔してキツイよねあの人。」
「…いいんだ、それでも。側に、居れるだけでも…!」
―下らない。
側に居るなら手を出してなんぼだろう。
全部奪え。身体も心も、意思も、何もかも、全部だ。
「手に入らない人を想うのはそんなに楽しい?」
「楽しくなんか、っ」
「偽善者ぶるなって。欲しいんだろ?あの男が。」
「っ、おきっ…!」
するりと緩いジーンズの隙間から手を忍ばせる。下着の中までも簡単に侵入を許した指先が、彼の密部に触れる。無機質な爪先で軽く引っ掻けてやると彼が本気で抵抗の意を露にする。
「っ〜…!!ばっ、ばっかやろ、お前何してっ…!」
「何って?分かってるんでしょ?男同士の性交ではココ、使うって。」
「しっ、しっ、知ってるけど、おっ…俺は…!」
「…ああ、そうか。真中さんはタチ志望だっけ?」
「っ…!」
彼の頬に朱が走る。唇をぐ、と噛み締める姿は恥じらう乙女の様だ。
こんなに純情な男が、男を抱く、だなんて?
…想像も出来ない。
くすくすと彼の耳元で笑いながら悪戯に指先を二度、三度、カリカリと引っ掻けてやる。其れだけで仄かに熱を孕んだ密部に欲望を脹らませるな、と言われる方が無理な話だ。
「お、前…!離せよっ!馬鹿にしてんのかよ、この野郎…!」
「ねぇ、真中サン。」
ちゅ、と耳朶に軽く接吻を施す。其のまま舌先を狭い耳孔に捩じ込ませるとうわぁ、なんて色気の無い声が返って来る。気に止めず湿った音を鳴らしながら孔の壁を円を描く様に舐め回していると、段々と彼の抵抗する力が抜けてきた。
「…いつもどんな想像して1人でシてるの?」
「は、…はぁ!?」
「やっぱ自分をタチとして、あの人をネコにしてヤってるところを妄想して、おかずにしてるの?」
「すっするか!そんなこと!」
「またまたぁ。あの人のケツマンに、入れて出して、って…思いながらマス掻いてんだろ?」
「けっけっっ…ケツ…!?」
パクパクと鯉の口の様に唇を開け閉じしている彼を前に、片方の口端をクイ、と上げ、厭らしい笑みを浮かべる。
「だからぁ、ココ、」
「ひ、ィ…っ!」
ぐ、と表面を掻いていただけの爪先をほんの少し内部、入り口近くまで挿入する。
「…コ、コ、に。」
「ぃ、…!!?」
「自分のモノ入れて、出して、ぐちゃぐちゃに汁まみれにさせてるところ妄想して、1人でシてるの?って聞いてるの。」
「…っ!」
顔を下に背け、ブンブンと首が千切れそうな程左右に振る彼。そんな邪な行為などしていない、と声を出さぬまま伝えてくる。…面白くない。
「ねぇ、真中さん。」
彼の頭上で両手首を押さえ付けていた手を離す。もう抵抗する力はすっかり薄れてしまっているようだ。だらんと力無く下方へと伸びる光景を目の縁に入れ、にやりと一つほくそ笑むと彼の顎に空いた指を掛ける。
もう片方の指先は勿論未だに可憐な蕾に掛けたままだ。
「一度でもあの人を無理矢理押し倒して、犯してやろうって思った時、ある?」
「は、―ぁ…?」
「ある?」
目を合わせる。
一直線に、瞳と瞳を合わせる。
茶色い眼の中に俺が映っている。
「な、い…、…俺は、そんな…」
「俺はね、いつも考えてる。」
「え…?」
顎に掛けた指先に自然に力が入る。駄目だ、彼の柔い肌に傷が入ってしまう。
「真中さんがあの人の話をする度に。あの人の名前をこの唇で辿る度に、」
「お、きた…」
「俺はその度に、頭の中で」
尖った爪先が、ついに彼の肌に赤い線を引いてしまった。
「…あんたを犯してる。」
ほら、気持ち悪い。
キモチワルイ、キモチワルイ、・・・俺。
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