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永遠の片思い3(平凡受け/美形攻め/不倫愛/アラサー)

何を、と続けたかった。
何を言っているんだお前は、と馬鹿にして笑ってやりたかった。

なのに、俺の胸に走る高揚感。甘い甘い、痛み。
嬉しいんだ、馬鹿みたいに透の告白に胸を躍らせているんだ俺は。縋り付いてしまいたい。このまま柑橘系の匂いを漂わせている、目の前の男の腰に手を回して、誰の目も構わず抱き締めて、抱き締められたい。

でも、駄目だ。俺は素直に流されるわけにはいかない。

「う、そだろお前。ざけんなよ…」
「嘘なんか、」
「お前、恥ずかしくないのかよ。いい歳したおっさんナンパして…ウケる…」
「ナンパなんて…そんなわけ無いだろ!」

へらへらと曖昧に笑う俺に対して、透の冴えた声色が誰もいない公園に響く。案の外大きくなった己の声量に透自身がごめん、と小さく謝罪するが、透に叱られた経験の無かった俺は身体が凍り付いてしまった。

だって、お前が悪いんじゃないか。
俺の一世一代の告白を正式に断りもせずに無視して、置いてけぼりにして。
そのまま放っておいてくせに。

なのに今更、愛してるだなんて酷い台詞を言って退けるんだから。
冗談にでもしないと、可哀想だと思わないか?


「…っ今頃…遅いんだよ馬鹿!」
「スグ、…!」
俺の肩に置いていた透の手を、乱暴に払う。なんとか透から離れようと行儀悪くも足裏で透の膝に軽くだが、蹴りを入れる。
慌てて透が俺からの抵抗と言う名の暴力を避けるが、憎たらしい事に俺の手首を掴む力は緩まない。

器用な野郎だ。
俺の攻撃を避けながらも、俺自身からは離れないのだから。

「ち、くしょっ…離せ、離せよ!お前なんか、お前なんかっ!」
もう嫌いだ、いや、好きでも嫌いでも無い、なんとも思って無い―。


「危ない、スグル…!」
「わあ!」
ぶんぶんと両手両足を滅茶苦茶に振っていると、地面に足を取られてしまう。

(―倒れる!)

衝撃に備え、目をぎゅう、と瞑るが予想していた痛みが俺を襲う事は無かった。代わりに在るのは柔らかな感触。透が背後から俺を抱えるようにして、支えてくれていた。

「っ、危ないなぁ…」
「…とお、る…」
「昔っからスグルは直ぐ周りが見えなくなるから。」

だからかな、ほうって置けない―、と。

耳元で囁く様に紡がれる台詞。


…嘘吐き。
嘘吐き嘘吐き嘘吐き。


放って置いて…容易く捨てて行ったくせに。この優しい体温も、力強い腕も、低くて甘い声も。
もう俺のモノじゃないくせに―。

でも、…それでも。

おずおずと透の腕に両手を絡める。堪えきれず溢れる涙も其のままに、ただ一言。


「…好きだよ。」


とおる、と続く予定だった俺の言葉は透からの噛み付く様な接吻によって掻き消された。






ギシギシ、と安いベットのスプリングが悲鳴を上げて、揺れる。

「う、あ、あ、」
「ん、すごい、締め付けてる。…キモチいい?」
ゆっくりと腰を使いながら、背後から透が耳元で聞いてくる。
ねっとりと耳の内部まで嘗め回されると、返答しようにも唇から漏れるのは甘い喘ぎ声だけだ。


あれから二人、流れ込む様にして近くに在ったホテルへと駆け込んだ。外装からして古惚けた、粗末な作りのホテルだったのだが今の俺達には如何でも良い事だった。

今直ぐ、繋がりたい―お互いが、確信を持ってそう思っていた。


「ふ、…っもち、いい…っ」
「ん?聞こえない…」
「き、もちいい…!」
「聞こえない…」
「―あ!っん、ん!」

腰を両手で掴まれた、と肌の感触で感じ取ると、それまでの緩いピストン運動から息もつかせない激しい動きへと変化する。単調な動きだが、透自身が凶器となって俺の内部、奥深くを探り、虐める。

「む、り、…壊れ、る…!」
「…逃がさない。」

身体が逃げる様に上へ上へと上がるが、透の両手で何度も引き戻されて、強く貫かれる。じゅぶじゅぶと卑猥な水音が容赦無く俺の耳へと運ばれ、一層羞恥心に煽られてしまう。

「あ、あぁ…!駄目、だ、とぉる、っ…〜…!」
「ふ、…さっきの…ナカから漏れてる。やらし…」

濡れた音が激しくなった理由に透の精液が俺の内部から溢れ出てきた事も挙げられるだろう。二回目…いや、三回目だろうか。
揺れる視界の中、吐き出された回数をぼんやりと辿っていると行き成り情景が回転する。体勢が後背位から正常位に変わったのだろう。内部が擦れて、思いもよらない部分が刺激され、高い声が出てしまった。

「あ、!…」
「ほら、スグル…触ってごらん。」
「…ん、」
「分かる?ココで俺達繋がってるんだよ。」

透の指が俺の手を掴み、一つになっている部分…結合部へと導く。ペタリ、と濡れた感触に頬が染まる。

透自身と、俺の受け入れている箇所。指先で恐る恐る辿ると、じんわりと目頭が熱くなった。

ああ、本当に今俺達繋がってる。
一つになれているんだ。


「…うれ、しい。」
「スグル…」
「どうしよう、透。俺」

首を左右にふるふると振る。駄目なのに…こんな想いは、許されない。だって透には今は―…。

(でも、でも)

「ご、めん、俺、嬉しい…」

ポタリ、と雫が頬を流れてシーツへと染みていく。透が唇で何度も、何度もそっと拭ってくれる。

「謝らないで、スグル。俺、…」
「…?透…?」
「俺、…」
「―…?」




「スグルと、生きたい。」

だから―。

全部、スグル以外を捨てる。

透は透明な瞳で俺を射抜くと、はっきりとそう告げた。




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