[通常モード] [URL送信]

過去拍手
valentine小説(ナツ、カナメ、サキ、生徒会。藍沢×ナツ気味?)



どんなに暗い夜でも、いつかは明ける。そして、太陽は平等にすべてを照らす。

それと同じように、俺にはまっっったく縁のない日も毎年やってくる。

チョコレート戦争。女の子の決戦の日。


そう。今日はバレンタインデー。



Valentine's Day



昨日は珍しく、サキもカナメも犀川も基陽先輩も誰一人部屋に来なかった。

朝から勉強したり、洗濯したりのんびりと休日を満喫している。
ちなみに今はゲーム中。いつもは格ゲーばっかだけど、今日はロープレ。最近、全然やってなかったからな〜。


コーヒーを飲みながらプレイしていると、いきなりチャイムがなった。

サキかな。もうそろそろお昼だし。


そう思いながらドアを開けると、予想通りサキが立っていた。ダンボール一杯のチョコレートをもって。


「おはよー。」


「おう。ってどうし…あぁ、バレンタインか。」


今日は土曜日だから、正確には明日だけど。
そういや、何か殺気立ってたもんな〜。だから昨日誰も来なかったのか。


「うん。消費しきれないから、ナツに何か作って貰おうと思って〜。」


部屋に入って、ダンボールを机の上に置くサキ。


「作るって…もう加工済みだからなぁ…」


箱の中を覗き込むと、そりゃあもう高いです私!って感じのオーラが出まくりのチョコレート達。


「ビター系使ってガトーショコラとかブラウニーとか…?」


生地に練り込んでロールケーキとかフォンダンショコラにザッハトルテ……


「うん、まかせる〜。あと、これは僕からだよ♪」


差し出されたのは、俺が今一押しのメープルのケーキ。


「うわ!ありがとう!」


中を開くと苺のスポンジケーキ。しかも38センチのホール。


「サキ……最高…!」


「でしょ〜?一緒に食べよ〜」


ホクホクしながらヤカンを火にかけていると、またもやチャイムの音。


今度はカナメと犀川かなぁ。


「よっ!遊びにきた!」


「これ食え。」


ドアを開けると、やっぱり予想通り。いつもの2人が立っていた。


「うわ…犀川もまたえらい貰ったな…」


差し出されたのは、サキと同じくらいの量のチョコレート。


「あと半分くらいは部屋にあるんだけど、イツキ1人じゃたべきれないからお裾分けにきた!俺甘いもん駄目だしな〜。」


え。つか、これの半分犀川食べんの?すげぇなおい。


「さんきゅー」


「あ!サキ!来てたのか!」


「うん。さっきね〜」


「うわ。これサキのチョコ?すげぇな!」


「犀川君ほどじゃないよ〜」


和気あいあいと話す三人を後目に、ヤカンへと向かう。


「あ。ナツ!これやる!」


「え?」


いいながら差し出されたのは、綺麗にラッピングされた手の平サイズの箱。


「バレンタインだから!」


「え。でも、俺なんも用意してないけど…」


しかも、これ受け取ったら色々怖いことが起こりそうなんだけど。犀川とか睨んでるし……


「いいんだ!俺があげたかったんだから!」


「じゃあ…遠慮なく…」


目に見えて犀川が落ち込んでますけどカナメさん。まさか、あげてないとか…いや。怖いから聞かないどこう。


「生徒会には〜?」


サキィィィ!お前、空気読んであえて聞いたろぉぉぉ!??一番タチ悪いぜこのやろぉぉぉ!


「は?やってねぇよ?」


何で?と首を傾げるカナメ。うわ、もし知られたら俺死刑決定?


「犀川くんには?」


「イツキにはやったぜ!なぁ?」


「あぁ。」


えぇぇぇぇぇ?!じゃあ何で俺今睨まれてんの?!貰ってんじゃん!!


痛い視線を感じながらも、コーヒーの準備をする。

それにしても、何故俺のところにチョコをもってくる。どうしよう……


ドリップしながら考えていると、またもやチャイムがなった。

なんだどうした。嫌がらせか……?


「ちょっと出てくんない?」


「あ、俺出る!」


玄関に走っていくカナメに、もう本当嫌な予感しかしない。


「お邪魔するよ。」


言いながら入ってきたのは藍沢先輩。


だけじゃなかった。


「おい。茶。」

会長様

「失礼する。」

副会長様

「おじゃまぁ〜」

会計補佐様

「来ちゃったぁ☆」

会計様

生徒会オールスターズ。え、なにこれ。いじめ?


「何でお前らが来るんだよ!」


「だってカナちゃんの部屋行ったけど居なかったんだも〜ん☆」


「ここだろうなと思ったんだよねぇ〜。」


「おい、何でクズまでいる。消えろ。」


「お前が消えろ失せろ死ね。」


「あぁ?」


「やめろ匠。」


「喧嘩すんなよ!お前ら!」


カオス………


「ナツ君、手伝うよ。」


「あ。ありがとうございます。」


喧騒のなが、基陽先輩が近くにやってきた。
ちなみにサキはニヤニヤしてみている。いつもの如く。


「ごめんね。連れてくるつもりはなかったんだけど…」


「いえ………」


本当に申し訳なさそうに苦笑する基陽先輩には何もいえず、黙々と手を動かす。


「そうだ、君に渡したいものが「おい、平凡。」


いきなりかけられた言葉に振り向くと、会長様が偉そうに仁王立ちしていた。


「お前、俺に渡したいものがあるだろ。」


「は?いえ、別に…」


「遠慮すんな。貰ってやらなくもない。さっさと出せ。」


なに?なにを言ってるんだこの人は。


「あ!あっくんずる〜い!僕にもあるよねぇ?てか、僕だけにだよねぇ☆」

「いやいや、俺っしょ〜!」

「………」


え。まじでなに?なんの刑?
もしやカナメのチョコがバレたとか?

いやいやいやいやいや。

俺、死んだ。


「ああああああの!カナメのチョコなら机の上に……!」


「「「「は?」」」」


振り返った4人の目が怖い。くそっとか、逆チョコかとか、油断したとか、ぶつぶつ呟いている様も怖い。


「何だよ!何か文句あんのかよ!」


あわわわわわわカナメさぁぁぁぁぁん!ちょっと空気読んでくださいよ!!俺、今崖っぷちなんですって!!ギリギリチョップなんですってぇぇぇ!


「あの!それ持って帰って貰っていいんで!」


「は!?何言ってんだよナツ!お前にやったんだからな!」


カナメのばかぁぁぁぁぁ!!
何、油注いじゃってんの!?それ火っていうか、炎だから!キャンプファイヤー並みだからぁぁぁ!!!


「……………お前、甘いもん好きか?」


「へ?」


「甘いもん好きかっつってんだよ。」


「はははい!」


「………用事ができた。帰る。」

「は?」

「僕もぉ〜☆」

「え」

「俺もぉ。」

「あ」

「コーヒーを無駄にしてしまうが、すまない。急用ができた。」

「の」


団体で帰っていく彼等の背中を茫然と見送る。なんなんだ…。


「つか、コーヒー……」


どうすんだこの量。


「とりあえず、みんなで飲もうか。」


あ、基陽先輩は帰んなかったんだ。


「はい…」


その後は、平穏に何事もなく過ぎていった。 いつものように昼飯を食べてゲームして、少しだけ勉強(カナメと犀川は昼寝)して、夜ご飯たべて、みんなのチョコでデザート作って、またゲームをして。

そして力尽きた奴から雑魚寝に入り、俺は布団を掛けてやる。

「ナツ君。」


俺も寝るかなと思っていると、最後まで起きていた基陽先輩に声をかけられた。


「どうしたんですか?」


「うん。君に渡したいものがあって。」


いいながら、どこからか出して来た袋を俺に差し出す。


「ハッピーバレンタイン。」


そういって微笑む先輩は、すごく綺麗だった。


「えっ。うわ、ありがとうございます!」


受け取ると、中には皮製のブックカバーが3つ。
茶色とベージュと黒。色も凄い好み。めちゃめちゃ嬉しい。めちゃめちゃ嬉しいが、


「これ…すごい高そうなんですけど…」


ブックカバーからオーラが出てる気がする…。


「本当は、全色にしようかと思ったんだけどね。受け取ってくれないだろう?」


だから、僕の一押しの色にしたんだ。
色気たっぷりのお顔で笑いながら、気に入った?と聞いてくる先輩に、勿論首を縦にふる。


「勿論です!でもこんな高そうなもの…」


「じゃあ、ひとつ我が儘を聞いてくれるかい?」


「俺にできることなら。」


俺の言葉に、百万ダラーの笑顔で口を開いた。





部屋の中に甘い匂いが漂う。

『ホットチョコレートが飲みたい。』


そんな可愛い先輩の我が儘に、差し入れのチョコから作ったホットチョコレートを2人で飲んでいる。


「美味しい。」


「良かったです。」


フフ、と嬉しそうに笑う先輩。穏やかで優しい空間。


「ナツ君からのバレンタインチョコだね。」


「あはは、そうなりますね。でもこんなんで良かったんですか?」


「充分だよ。いつもご飯も頂いてるからね。そのお礼もあるし。」


「そうですか…じゃあ遠慮なく頂きます。大切に使わせてもらいますね。」


「うん。」


その後はお互いに飲みほすまで無言になった。けど、前みたいに嫌な間じゃない。むしろ居心地がいい。


「そろそろ寝ようか。」


「そうですね。」


鍋とコップを水につけて、歯を磨いてから布団に向かう。先輩は2人の所へ。俺は自室へ。


おやすみなさい。


今まで縁なんてなかったけど
イベントに興味なんてなかったけど

こんな1日は悪くない


おやすみなさい。またあした。








[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!