BL短編小説 エゴイスト05 次の日。 校門には、あの少年の姿はなかった。 「良かったじゃねーか」 「うん」 嬉しそうに肩を叩く早川に、俺は気のない返事をする。 「何だよ、せっかく元の生活に戻れたってのに浮かねぇ顔して」 「そんなことないけど…」 結局、名前も聞かなかったな――― 何処に住んでいたのか。 何処の学校に通っているのか。 何処に引っ越すのか。 どうして俺のことを好きになったのか。 何ひとつ…聞けなかった。 突然、やってきて。 突然、去っていった。 それは、気まぐれな嵐のように。 俺の心に、小さな傷跡を残していったんだ。 [前へ][次へ] [戻る] |