BL短編小説 ナルシスト 俺には双子の兄貴がいる。 一卵性だから、顔も背格好もそっくりなのだが。 「楠木君」 ほら来た。 クラスの女子に呼ばれ、俺は面倒くさそうに振り返った。 「何?」 「あの…これ…」 差し出されたのは、可愛らしい封筒だった。 「お兄さんに…渡しておいて貰えないかな?」 彼女は、顔を赤らめながら、上目遣いに俺を見る。 「兄貴は、こういうの受け取らないと思うけど」 「それでも良いから、お願い!」 彼女は、手紙を俺に押し付けると、逃げるように俺の側から離れていった。 全く同じ顔だってのに、何で俺じゃなくて、兄貴なんだ。 毎日こんな役ばかりで、俺はいい加減ウンザリしていた。 [次へ] [戻る] |